易経勝手解釈（十）・・・山雷頣

四月五日

　久しぶりに易経勝手解釈を復活します。復活第一弾は山雷頣です。



　山雷頣は昆山と震雷が合わさった卦です。卦の形象を見てみると、大口を開けたように見えます。そのことから、これは食べ方、いわば食事の時のエチケットから人の素質を読み取ることを表す卦と言われています。

　山雷頣の伝統的解釈は、上の爻と下の爻の陰陽の対応から解釈しようとしており、非常に苦しい解釈となっています。はっきり言って無理があります。

　しかし古代人はもっとダイレクトに物事を表現します。山雷頣の初爻には、「亀卜（亀占い）なんか止めて、頣を見よう」と書いてあります。亀卜とは亀の甲羅（甲骨）に焼きごてを当ててできる割れ目を観察する占いで、商（殷）で盛んに行われていました。

　商の最後の都が置かれた殷墟では大量の亀の甲羅が見つかっています。その甲羅には、漢字の原型となった文字が刻まれていました。商の卜官（占い役人）は、占った事柄と結果を亀の甲羅に刻んでいたからです。これが甲骨文字で、甲骨文字を研究することで伝説とされていた商の実在が確かめられ、支那の古代の研究は飛躍的に深まりました。

　しかし亀占いをするためには亀を殺さなければなりません。商の祭祀は大量の犠牲（人間の生け贄も）を伴い、あまりにも商の祭りが巨大化しすぎて周辺民族にとって負担となったことが商が滅んだ一因とも言われています。

　その亀卜を止めろといっているのですから、頣というのは亀卜に代わる動物占いではないかと思います。食べ方で占う動物占いなんかあるでしょうか？これがあるのです。鳥占いです。鳥占いは世界中の民族で古くから行われている占いです。

　鳥は空を飛びます。ですので、この世と天や霊界の間を行き来できると信じられていました。飛べない鳥である鶏も、明け方を告げるため太陽の運行と関わりがあると信じられてきました。深い森の中で夜に羽ばたくフクロウも、その風貌から知恵の象徴とされてきました。

　鶏のえさのついばみ方や鳴き声で吉兆を占う鳥占いは、アジア全体で広く見られます。私は山雷頣とは山（鶏は雉の仲間で元々山鳥）で雷のような甲高い声を出す鶏の仕草によって占いをする鳥占いを表していると推測しています。

（２７）山雷頣
象	卦辞		伝統的解釈	べっちゃん解釈
	頣を観る。自ら口実を求む。		その人が、平素何を食べているか（たしなんでいるか）、自分自身の心身を養う手段として何をしているかを観察せよ。	鶏の餌のついばみ方を観察せよ。余計なことをせずに、鶏の自由にさせて食べ方を観察せよ。
象	爻	爻辞	伝統的解釈	べっちゃん解釈
	上九	由って頣わる、厲うくして吉、大川を渉るに利あり	君子の委任を受けて上位に立って下の者を養うので吉である、大胆なことをやっても大丈夫	鶏が餌を平らげる（由の原義は「空っぽ」）、鬼神の助けが得られる状態で、大胆なことをしても大丈夫
	六五	経に払れり、貞におれば吉なり、大川を渉るべからず	君子でありながら下の者を養うことができない、そのためさらに上位の人に助けを求める、謙遜しており責任感があるので吉であるが大それたことをしてはいけない	羽を羽ばたく、（危険を察知している状態なので）じっとしていれば吉である、大それたことをしてはいけない
	六四	顛まに頣わるも吉なり	従順で正しい四爻が初爻に養いを求めるので吉である	首をねじって餌をついばむ、（異常な行動のようであるが、落ち着いているので）吉である
	六三	頣うに払る、貞なれども凶	食わんがためにどんな不正なことでもしようという状態で道理に悖っている、貞淑なふりをしていても凶である	羽ばたきながらついばむ、（鶏が落ち着いていないので）身を修めていても危険な状態
	六二	顛まに頣わる、経に払れり、丘に于て頣わる、征けば凶	下位の者に養われるので転倒している、行こうとしても凶運に遭う	鶏が首をねじり、羽を羽ばたく、丘の上に登って餌をついばむ、（落ち着きがなく迷っているので）行けば凶である
	初九	爾の霊亀をすて、我が観て頣を朶る（たる）、凶	だらしなく下あごを垂らす様、凶である	残酷な亀占いなんか止めて、鶏が首を垂れて餌をついばむ様子を観察せよ