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2011年5月12日 (木)

日本神話の星座的解釈(三)

四月十日

 海部神話に入る前に、天照大神、須佐之男命の神話の星座的解釈を先に済ませておきます。

 まず最初に太陽と月から。太陽は言わずとしれた天照大神です。月は月読命(つくよみのみこと)で、風の神様として須佐之男命の三柱の神様が日本神話の核となる神様です。風は天から吹きますので、昼の神様(陽)と夜の神様(陰)がいてその間に天候を司る神様(陰陽の交わり)がいるというのは非常にバランスがよいのです。

 けれどもこの組み合わせはあまりにもできすぎていますので、支那から陰陽五行思想が伝わった後にできた神話かもしれません。

 天の岩戸で復活する前の天照大神はひ弱な神様で須佐之男命の暴虐になすすべがありません。天照大神が機織りをしているところに須佐之男命が乱入して、家をめちゃめちゃにしてしまい、恐れ悲観した天照大神は天の岩戸に隠れてしまいます。

 太陽神として復活する前の天照大神は、女性的要素が強く、養蚕・機織りの神様であったと推測されます。この原天照大神は大和盆地で古くから信仰されていた神様なのでしょう。これが崇神王朝によって大和盆地から追い出されたらしいことが倭姫伝説から推測できます。追い出されて放浪する倭姫は、天の岩戸以前の弱い天照大神と符合します。

 さて機織りの神様と言えば七夕伝説です。七夕伝説は星空と関わりの深い神話です。天の川の両岸に配置された織姫(おりひめ、織女星、琴座のα星ベガ)と彦星(牽牛星、鷲座のα星アルタイル)が愛し合い、織り姫が機織りをサボるようになったので天帝の怒りに触れて、一年に一度しか会えない定めになったという話です。

 なぜ琴座のベガが機織女になったかというと、琴座の形が機織りの「杼(ひ、シャトル)」に似ているからです。

 杼は菱形をしており、後ろから糸が出ています。機械化された杼は細長い形をしていますが、原始的な杼は菱形です。この形が琴座とそっくりなのです。

 機織り機を見てください。経糸(たていと)と織り上がった布が機織り女(はたおりめ)の前に伸びています。杼を持った機織り女は、緯糸(よこいと)を通すために経糸の間を杼を横に行ったり来たりさせて布を織ります。杼が行ったり来たりする様子が、恋する若い女が実家と恋人の間を行ったり来たりするのを彷彿とさせるため、機織りと恋愛が結びつくのです。

 織姫と彦星は天の川を挟んで両側にあります。天の川を天女の羽衣に見立てれば、機織り=恋する乙女=行ったり来たり=杼=ベガとアルタイル=天の川=天女の羽衣がつながるのです。

 さらにベガとアルタイルの下には白鳥座があります。白鳥座は人が両手を伸ばしているようにも見えます。ベガとアルタイルが機織り機で、天の川が天の羽衣、そして白鳥座は機織り機を操る機織り女なのです。

 天の川はベガとアルタイルのあたりでは二つに分かれていますが、白鳥座の方向では一つに合流し、天の川は濃くなります。これも二つに分かれた経糸(たていと)が、緯糸(琴座)によって合流し、機織り女(白鳥座)の後ろに長くきれいな羽衣が織られるように見えるのです。

七夕の星空(大分県国東市梅園の里天文台)

 古代人の観察力と想像力は見事です。感動的です。

 七夕は恋と繋がりがあるのですが、その時期に歌垣(若い男女が野に集って結婚相手を見つけるお祭り)が行われていたのかもしれません。

 さらに七夕は七月七日(新暦では八月上旬)にあります。これは台風のシーズンの前に当たります。ここで、七夕と風雨の神がつながるのです。七夕の後には台風がやってきます。これが恋(歌垣)にうつつを抜かす織姫に怒る天帝であり、天照大神の機織りを台無しにしてしまう須佐之男命です。七夕が終わったら、女は家の仕事に戻り、男は風水害に備えなければなりません。

 天照大神が機織りをしているところに須佐之男命が乱入してきて機織り機を台無しにしてしまう物語は、後から付け足したような唐突感があります。天照大神と須佐之男命が対決する物語は既に天の安河の誓約(うけひ)にあり、そこではそれなりに強かったはずの天照大神が、すぐ後に出てくるこの話の中では急に弱くなって須佐之男命に負けてしまいます。

 天の安河の誓約は後述するように海部の星座神話の一部をなしていますが、天照大神が機織りをしている神話は、元々は海部の神話ではなかったか、登場人物が天照大神ではなかったのでしょう。倭姫以前の大和盆地で機織りの神様として信仰されていた原天照大神の神話かもしれません。

 ただ、この天照大神と須佐之男命の機織り神話を七夕と台風の神話だとすると、その後に天の岩戸と天孫降臨が配置されていますので、台風の季節の後に太陽が復活し、稲の収穫(天孫降臨が稲の神様のお話であることは衆目の一致するところ)が来るというのはうまくつながっていることになります。

 私の推測では天孫降臨の登場人物は真冬から春にかけての星座です。

 しかしこれだと天孫降臨はむしろ収穫というよりは種まきというべきなんじゃないかという疑問が出てくると思います。

 その通りだと思います。

 後で詳しく述べますが、邇邇芸命は焼き畑農業の麦の神様です。麦は秋に植えて冬に収穫します。神武天皇以前の神話は水田耕作ではなく焼き畑農業が主であった時代の神話だろうというのが私の推測ですので、歌垣(七夕)→台風(天の岩戸)→麦の種まき(天孫降臨)→麦秋(麦の刈り入れ)という順序で神話が配置されているのはごく自然と言えます。

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コメント

面白いですね。日本神話と星座の関連なんて想像もしませんでした。
神話の時代とは少し違いますが、こちらはそろそろ麦秋ですし、
夜半を過ぎた今時分はもう夏の大三角が昇って来てます。実に興味深く観察させてもらいます。

3gouさんこんにちは

オリオン座が天宇受賣命で牡牛座が猿田彦ではないか、という説が10年位前に新聞に載っていて、それ以来ずっと他の日本神話も星座で読み解けるんじゃないかと考えていました。

確信を持ったのは易経の山天大畜が冬の六角形で読み解けたときですね。

星はどこでも見られるわけですから、その土地土地に独自の星座があって当然だと思うのです。

支那から星宿が伝わったせいで失われてしまいましたが、古事記ができた頃には、あれらの物語が星座のことを指すことは説明するまでもないことだったのではなかろうかと私は考えています。

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