« 易経勝手読み(十七)・・・天雷无妄 | トップページ | 米国も日本病 »

2011年7月29日 (金)

易経勝手読み(十八)・・・天風姤

 易にちょっとでも触れたことがある人ならば必ずおぼえている卦があります。天風姤です。字面が何となくエロティックであり、女性が余り表に出てこない支那の古典では珍しく女性上位の状態を表す卦であり、特に女性の力が強まった現代では注目される卦でもあります。

 従来の解釈では、天風姤とは、男が強力な女性と出会って運命が狂うことを表しているとされます。逆に女性のことを占っていて天風姤が出たら、その女性は大いに運が開けると解釈することになっています。

 しかしこの天風姤、卦辞は難解を極め、従来の解釈は「姤」の漢字のイメージから学者や易者が勝手に想像して作った物に過ぎず、卦辞に即した解釈はどこにもありません。私の解釈ではなんのことはない、太ったお后様をからかった詩にすぎません。女偏が卦に出てきただけで、これまで二千年間、むっつりスケベの学者どもがのぼせ上がって妄想を繰り広げてきたのです。

 天風姤がデブのお后様をからかった詩であることの根拠を並べてみましょう。

 嬴や贏はヤドカリのことで、ヤドカリは貝殻から身体がはみ出していますので、太ってはみ出すという意味があります。羸も同じ字形なのですが、これだけは「痩せた」という意味を持っています。しかしこれはおそらく下の「豕(ぶた)」に合わせるために「羊」を入れてしまったから生じる間違いで、本来は嬴豕(メス豚)、あるいは女や羊が入っていない字(亡口月卂)だったと推測されます。

 従って羸豕は太ったメス豚です。

 臀は当然お尻であり、膚とは皮のように薄い部分のことです。臀无膚とは体中が尻のようにふくよかで薄い部分がないという意味です。

 杞とは柳のことであり、瓜は丸い野菜です。柳の葉っぱで瓜を包むと、きれいに包むことはできずに、瓜の皮が外から見える状態になるでしょう。「以杞包瓜」とは、太って衣類から腹がはみ出しているという意味です。

 「有隕自天」とは隕石のことを表していて非常に面白いです。第五爻が隕石だと言っているのは私の電波な解釈ではなく、従来から学者が主張していることです。員とは丸い青銅の壺のことです。ですので空からふってきた金属の丸い塊を隕石と呼ぶわけです。やはりこれも位の高い太った女性をからかっている句でしょう。

 「角」とはずんぐりむっくりした丸いコップに、細い三本の足が生えた青銅器のことです。やはりデブの女性を皮肉った言葉です。

 ですので、天風姤は、女性にとっては失礼極まりない詩にすぎないのでした。表現はユーモラスで悪意はないと思います。ただ単に太ったお后様をからかった罪のない口ずさみではないでしょうか。「みんなの歌」に小椋佳の「おなかの大きな王子様」というかわいらしい曲がありましたが、あれみたいなものです。

金[木尼]に繋がれた
嬴豕はてきちょく(行ったり来たり)
包みに魚あらん
利ならざる賓
臀にして膚无し
その行くや次且たり(行ったり来たり)
包みに魚无し
杞をもって瓜を包む
隕ありて天よりす
后はそれ角なり

キンキラキンの柵に繋がれた
太った豚が宮廷を行ったり来たりしているよ
あの立派なおなかは妊娠しているのかなあ
全く食うばかりで役に立たないお客様だ
体中尻のようにふくよかで細い部分がない
身体が重いのでしずしずと歩いている
あの立派なおなかには赤ちゃんはいないんだって
柳の葉で瓜を包んだように服から腹がはみ出しているよ
天から丸い石が降ることもあるそうだがそれかな
お后様はまるで足つきの壺のようだ

 天と風で太ったお后様になる意味がよく分かりませんが、隕石と無理矢理つなげているのかもしれません。

« 易経勝手読み(十七)・・・天雷无妄 | トップページ | 米国も日本病 »

易経・春秋」カテゴリの記事

コメント

久しぶりに易経が更新されてうれしいです。

天風姤の解釈、すごいです。
強い女がやってくるという一般的な解釈では、
さっぱりわからない卦辞。
ずっと頭を悩ませてましたが、
ぺっちゃんさんの説明ではじめて腑に落ちました。

天才ですね。

武丸さんお久しぶりです。

ここで揶揄されている高貴な女性は、おそらく嫁いだ家よりも高位の家から降嫁してきたのではないかと考えられますので(天よりおちる)、後世の天風姤の解釈はこのあたりから派生したのではないでしょうか。

お殿様よりも偉くて誰も文句が言えないお后様という意味だったんだと思います。

また、世界中の婚礼に婿側の若い男性たちが、若い娘が思わず赤面するような所作や歌を歌うことで、新しく一族のメンバーになるお嫁さんを歓迎する儀礼が見られます。

この詩もそういった場で歌われた祝歌なのかもしれません。

>ここで揶揄されている高貴な女性は、おそらく嫁いだ家よりも
>高位の家から降嫁してきたのではないかと考えられますので

なるほど! すばらしい!
高位の家から来た嫁。
謎のメインキーワード「天より隕石が落ちてくる(有隕自天)」がすっきりします。
だから「女壮ん」なんですね。これ。


>若い娘が思わず赤面するような所作や歌を歌うことで、

なるほど。この方面からでも解釈できそうですね。
身分の高い家から来た嫁のプライドを最初に打ち砕いておく。
そっちのほうがうまくいくんでしょうね。
今の日本の企業で新入社員に無茶な研修を課して学生的な自尊心を打ち砕くのも同じかな。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/173723/52337507

この記事へのトラックバック一覧です: 易経勝手読み(十八)・・・天風姤:

« 易経勝手読み(十七)・・・天雷无妄 | トップページ | 米国も日本病 »

2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ