« 易経勝手読み(二七)・・・睪地萃(沢地萃) | トップページ | 易経勝手読み(二九)・・・雷火豊 »

2011年8月27日 (土)

易経勝手読み(二八)・・・雷天大壮

七月二十八日

 壮という字が後に立派な男性を表すようになってしまったため、雷天大壮の卦も気力が充実することを表すと解釈されてきました。

 字統によると、壮の字には二つの字形があるそうです。一つは牀でこれはベッドを表す象形文字です。商(殷)の金文には子が真ん中にあり、両側に鏡対象に爿を配し、その下に大(大きな人間の形象)を配した紋章とおぼしきデザインが多く残されています。

Cocolog_oekaki_2011_08_26_23_20

 貝塚茂樹は、これは商の王子を養育する氏族の紋章ではないかと推測しています。赤子をベッドで守り育てる形象で、王子を中心にしてまとまる氏族を表したのではないかと言うわけです。古代日本にも似たような制度があったのではないかと言われています(おそらく貝塚茂樹は古代日本の王子養育氏族から連想してこの説を考えたのではないでしょうか)。

 壮(牀)とは、王子養育氏族のことであり、彼らは戦いの時は戦士となって王子に従いました。だから立派な男を壮と表したのです。

 もう一つの壮は壯です。これは土を杵で叩いて固める土木工事、すなわち版築を表す字です。

 版築とは古代から世界中で壁を築く際に使われている工法です。板で囲いを作り、その中に土を詰めて、杵で突き固めます。そうすると、ちょっとやそっとのことでは壊れない固い土壁ができます。日本でも法隆寺の壁などに使われています。特に支那は、黄土という版築に適した目の細かい土があったことと、乾燥していたため、古代から広く版築が使われ、今でも内陸部では一般的な工法です。万里の長城も煉瓦の外壁の中身は版築です。西安には三千年前の版築が今も残っています。

 さて雷天大壮の壮がどちらであるかというと、雷天とは文字通り雷様がゴロゴロと鳴ることを意味していますので、版築の方の壮でしょう。ドスンドスンと土を突き固める様子が雷鳴に似ているからです。

 雷天大壮の卦辞には羊とか羝羊(おそらくオリックスみたいな角を持った羊)が出てきてなんでこれが版築なのかよく分かりません。キーとなるのは初九の「壮は趾」であり、これはおそらく版築のように足で地面を踏みならして音を立てることを意味しています。

 九三の「小人は壮を用い、君子は罔を用いる」とは、「家来は足で地面を踏みならし、士は網を持つ」であり、つまりこれは勢子が音を出して森や草陰に隠れている動物を網に追い立てて捕まえる狩りを意味していると考えられます。

 「羝羊藩に触れる」とは獲物の立派な羝羊が網に絡まって身動きが取れなくなるという意味です。これは従来の解釈と同じです。

 雷天大壮の卦辞は、巻き狩りのことを歌った民謡ではないかと推測されます。君子(士)が網を持つということは、狩りをしているのは王や候などのかなり位の高い人物でしょう。ただ狩りをするだけならば弓で殺せばよいのに、わざわざ危険を冒して網で無傷で生け捕りにしようとしていることから、この狩りは神に捧げる生贄を捕まえるための、神聖な狩りなのではないでしょうか。

壮は趾
小人は壮を用ふ
君子は罔を用ふ
羝羊藩に触れる
その角を羸ます(くるします)
藩決るれば羸まず
壮は大輿の輹
羊を易(場)に喪ふ
羝羊藩に触れる
退く能はず
遂む能はず

足を踏みならして音を立てる
勢子は音を立てて獲物を追い立てる
お侍たちは網を構えて獲物を捕まえる
立派な羊が網に引っかかる
角が網に絡まる
網が破れれば逃げられるのに(逃げられない)
大きな車の車軸がガラガラと音を立てる
(獲物は車に載せて運ばれる)
羊は祭場で犠牲として捧げられる
羝羊が網に引っかかってしまった
退くことも
進むこともできない

 震雷が関わる卦には、象占いの雷地豫や、帝乙の鎮魂を祈った雷睪帰妹など、商(殷)に関わる卦が多くあります。商の王は生贄に使うため、動物を頻繁に狩ったと言われており、甲骨文字にも狩りの成否を占う卜辞がたくさん残されています。

 ですので、雷天大壮も商の王の巻き狩りの様子を謳った詩なのかもしれません。

« 易経勝手読み(二七)・・・睪地萃(沢地萃) | トップページ | 易経勝手読み(二九)・・・雷火豊 »

易経・春秋」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/173723/52575091

この記事へのトラックバック一覧です: 易経勝手読み(二八)・・・雷天大壮:

« 易経勝手読み(二七)・・・睪地萃(沢地萃) | トップページ | 易経勝手読み(二九)・・・雷火豊 »

2017年8月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
無料ブログはココログ