易経勝手読み(十九)・・・水睪即(水沢節)
七月三日
「節」は祠に籠もって祈ることを意味する卦でないかと考えられます。節のつくりである「即」は、神へのお供え物を入れる器である皀の前に人が端座していることを表している文字です。この卦は元々「即」であり、たけかんむりは儒者が儒教の道徳に沿って易経を再編したときに付け加えられたと考えられます。
戸庭に出でず、門庭に出でずと祠の中に籠もって行う祈りであることが匂わされています。
「若」は巫女がエクスタシー(憑依)状態となって神託を得ている姿を現しています。つまり即は巫女が祠に閑かに籠もって祈っている状態と考えられるのです。
即に対比される動的な祈りが「差若」です。「差」は稲を神に捧げる姿を現す文字です。卦では「即は差若ではない」と言っているので、これはおそらく即が器(睪)に水、もしくは酒を注いで神に捧げる祭祀であることを表しています。
ことさらに屋内で籠もって行う祈りがこの卦で強調されているのは、古代支那では、公開の場で生け贄を捧げたり、王の遠征に当たって道路を祓ったり、巫祝を使って敵国に呪いをかけると言った祭祀が一般的だったからでしょう。
若や安という漢字から推測されるように即とは女性が家の中で一族の安寧を願って一心不乱に行う祈りと考えられ、「水」関連の卦に東夷系の文化の名残が感じられることから、この卦に出てくる祭祀は神道の根源に関わっていると私には思えます。
水睪即(水沢節)は神社の最も古い形態を表している、日本人にとって非常に重要な卦ではないかと私は思います。
戸庭に出でず
門庭に出でず
即ならざる若は、則ち差若
安即す
甘即す
古即す
祠の外に出ず
神域の外に出ない
(籠もって神に祈るのが即である)
即でない巫女の祈りは
収穫物を神に捧げる祈り
(即では水や酒のみを神に供えて閑かに祈る)
即では一家の主婦が家族の安寧のために
部屋の中で閑かに祈る
部屋に鍵を閉めて秘密の祈りをすることもある
祈りを書き記した祝詞を器の中にしっかりと保管して祈る
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