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2011年9月11日 (日)

易経勝手読み(三三)・・・地天泰

九月十四日


 地天泰の爻辞には肝心の泰の字は一度も出てきません。そのため、これも古来から難解とされていた卦です。しかし私の見るところ、地天泰は爻辞の意味は失われてしまったけれど、本来の意味は保存されている卦と言えます。

 地天泰は先に分析した周王の太子に対する遺訓である山睪損(山沢損)と風雷益に対置される卦です。すなわち、貧乏豪族が子孫に残した遺訓です。帝乙帰妹が入っているところから、周に破れて荒れ野に強制移住させられた商の生き残りの家訓かもしれません。

茅を抜きて茹ふ(くらふ)
其の彙(たぐひ)と以にす(ともにす)
荒を包むには
馮河を用いよ
瑕を遺さず
平らか无ければ陂ず(きづかず)
往く无ければ復らず
翩翩として富まず
其の鄰と以にす
戒めざればもって孚はれん
帝乙帰妹
城復りて隍となる(からぼり)
師を用いるなかれ
自邑に命を告げよ

茅を抜いて食べる
仲間と団結する
荒れ野を開墾するには
河から水を引け
宝物を遺産として残さない
地面が平らでなければ堤防を築く必要がない
(平らな土地は堤防を作って水害を防げ)
遠くへ行かなければ、帰ってくる必要もない
(苦しくても逃げ出すな)
身軽な状態でいて富を貯めず
隣人と財産を分かち合いなさい
これを守らないと捕らえられるであろう
帝乙よ妹(地名)に帰れ
(帝乙の怨霊化を防ぐ呪文)
立派な城もすぐに空堀となる
(どんな防衛措置も役に立たない)
戦争に訴えることをしてはいけない
自分の国に命令を伝えなさい
(他国のことに介入するな)

 なんだか戦後の日本みたいです。やはり牧野の戦いに負けて散々な目に遭わされた商の人たちが残した戒めだと思います。

 包荒用馮河の意味だけは字統を調べてもよく分かりませんでした。

 荒は荒れ地、ただの荒れ地ではなくて飢餓で死体が散乱するように悲惨な荒れ地。馮はよりあつまるという意味です。河を寄り集めて、荒れ地を包むのに用いよとなりますので、荒れ地を用水路で灌漑しろと解釈しました。

 帝乙は商の最後から二番目の王で、周に滅ぼされた帝辛(紂王)の父親。そして詩経に残る伝説によると、周の文王の母方の祖父か叔父に当たる人物です。強力な王だったらしく、このときに商王は「帝」すなわち天の神と同じ力を持つ現人神を自称しました。

 周にとっては、国を滅ぼされた帝乙が怨霊となって、周室に祟りをなす事を畏れていたのだと考えられます。その帝乙を封印する卦が雷睪帰妹(雷沢帰妹)です。雷は商を、睪は位牌・依り代・祭器を表しています。

 地天泰は周に滅ぼされて、細々と生きていくことを余儀なくされた商の生き残りたちの反省の気持ちを表す卦でしょう。それは地天に現れているのです。かつて天だった商が地に落ちて、地だった周が天になった世界を彼らは生きていたからです。

 殷周革命とは、まさしく彼らにとっては天地がひっくり返ったのであり、ひっくり返った世界で生きるための処世訓が地天泰であるのです。

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