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2011年9月13日 (火)

易経勝手読み(三五)・・・山火賁

八月十六日

 これは素直に読める卦です。匪寇婚媾が出てきますので、結婚を歌った詩であることはすぐに分かります。これは水雷屯の続きではないかと思います。

 山火賁の詩では白色が強調されています。それなのに、内卦は赤を表す火です。なぜでしょうか?

 賁という字は華と同じ要素(十の字が並んでいる)を持つ字です。小さなつぼみの状態だった物がパッと開くことを賁といいます。その開いた状態を華(花)といいます。だから賁を要素に持つ漢字には噴火、憤怒、墳丘のように、発散する、盛り上がるという意味があるのです。

 水雷屯が結婚を申し込む花婿を歌う詩でしたので、山火賁は披露宴で赤らむ花嫁を歌った歌でしょう。真っ白な衣装と白粉で身を飾った花嫁が美しく赤らんでいる様を歌ったのが山火賁です。水雷屯と山火賁は非常に視覚的で美しい詩です。

賁は其れ趾
車を舎て(すて)徒(かち)よりす
賁は其れ須(ひげ)
賁するが如く濡るるがごとし
賁するが如く番[白番]するがごとく
白馬翰するが如し
寇するに匪ず婚媾せんとす
丘園に飾る
束帛戔戔たり

飾り立てた蹄
花婿は馬車から降りて、花嫁をエスコート
きれいにした髭(めかし込んだ花婿)
したたるようにつやつやと美しい花嫁
空にはためく旗のように白く
白馬は空を駆けるよう
略奪ではない、正式な結婚なのだ
披露宴の式場の丘は
贈り物の布で飾り立てられている

 この歌とそっくりの情景を詠った和歌があります。百人一首の持統天皇詠歌「春過ぎて夏来にけらし白妙の布ほすてふ天の香具山」です。この歌は結婚式、おそらく若き日の大海人皇子(天武天皇)と鵜野皇女(持統天皇)の結婚式を懐かしんだ歌ではなかろうかと思います。

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易経・春秋」カテゴリの記事

コメント

ぺっちゃんさんはすごいなあ。

「車を捨てて、徒す(歩いていく)」はずっと謎でした。
巷の解釈は「車に乗らずに歩いたほうが健康にいい」というもんが大半で、
それはそれで確かに良いことだけど、あまりに唐突な一文な気がしてました。

「花婿は馬車から降りて花嫁をエスコート」
この流れでみると、実に自然に読めますね。
ぺっちゃんさんの解釈はいつも感動的です。

武丸さん、ありがとうございます。

易経は最初から筮卜のテキストとして、八卦を解説するがために書かれたという思い込みが易経の正しい理解を妨げていると思います。

易経は民間の詩や百科事典的な書やハウツー本的な書を無理に八卦の枠にはめ込めて作られた書ではないかと私は推測しています。

易に精通した人はどうしても八卦を主にして易経を読んでしまいます。だから「水雷屯と山火賁には同じ匪寇婚媾という句が出てくる、ふしぎだね」で終わってしまうんですね。

けれども八卦の方が後からくっつけた理屈ですので、元々は「匪寇婚媾」の方がテーマなんです。水雷屯と山火賁は屯と賁を説いたのではなくて匪寇婚媾を歌った詩を無理矢理屯と賁に当てはめたんですよ。

同じような部分は多いです。易の中で離れた部分に似た表現が出てくれば、それはそっちの方が本来のテーマなのではないかと疑って読んでいくべきではないかと思います。

ただ、従来の解釈も、微妙に本来の意味を残しているんですよね。

馬から下りて歩くも、謙虚な気持ちになってとか、一歩一歩確実にとか解釈する場合がありますよね。

これは花嫁を初めて迎えるときの心構えが形を変えて、占うときの解釈の仕方として残ったのだと思います。

意外と占うときの心構えみたいな部分の方に古い意味が残されていたりするんですよ。

おそらく易という書物と筮占は別々に発達し、ある時期に融合したのだろうと思います。易という書物ができたときには、筮占もそれなりに完成されていたのでしょう。

だから易者の解釈の仕方の方が、儒学者の解釈よりも古い形を保存していたりするのだと思います。

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