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2011年9月16日 (金)

易経勝手読み(三七)・・・睪雷隨(沢雷随)

八月十九日

 随の字は正字(旧字体)の隨であることが重要な意味を持ちますので、隨で書きます。さて、沢雷隨の卦はもっぱら、人の助言に従う、従わないの意味だと解釈されてきました。

 しかし私の見たところ、これは商(殷)の人狩りを表す卦です。商は辺境に攻め込んで異族を捕獲し、神に生贄として捧げていました。甲骨には、この人狩りの成否を問うた卜辞がたくさん残されています。人身御供のことを問うた卜辞もたくさん残されています。

 人狩りは軍をおこして行いました。白川静によると、大将がいる中軍には神に捧げるための祭肉が掲げられていたと言います。その肉が師です。ですので睪雷隨の卦は地水師と関連があります。また隨の爻辞には有が頻出します。有とは肉を持って神に捧げることを意味する字ですので、祭肉を扱う神官です。従って随の卦は火天大有とも関連があります。

官は有が渝す(うつす)
門を出でて有功に交はる
小子を係る(かざる)
丈夫は失する
丈夫を係る
小子を失する
隨は有が求め得る
隨は有が獲へる(とらへる)
有は孚を道に在す(さらす)
孚は嘉なり
これを拘り(くくり)係び(むすび)
乃く(ながく)之を維ぎて(つなぎて)従はしむ
王は西山の亨(にへ)に用ふ

出陣に先立って祭肉は神官が神殿から移す
軍は城門を出て神官と合流する
少年を飾り立てる
大人がエクスタシー状態になるまで踊る
大人を飾り立てる
少年がエクスタシー状態になるまで踊る
隨とは神官が獣や鳥などの犠牲を採集すること
隨とは神官が異族を捕獲すること
神官は捕虜を斬首し晒し首にして道を清める
(異族の呪いを無効化する)
捕虜が得られれば目出度い
捕虜を縛り上げ、捕虜同士を繋ぎ
延々と繋げて戦利品として連れて行く
王は神聖な山の祭祀に捕虜を生贄として用いる。

 祭肉(睪)を掲げて、商軍がおどろおどろしい音(雷)を立てて踊りながら進むので睪雷隨です。隨とは探索のことであり、ずらずらと繋がるという意味で、両方とも人狩りを意味しています。

 人狩りの軍隊は、少年や大人を飾り立てて、踊りながら進んだとあります。そして最初に捕まえた異族を晒し首にしてから人を狩りました。異族にとってはかなり異様で不気味だったのではないでしょうか。この不気味さが商の力だったのだろうと思います。

 周も最初は討伐対象として登場します。羌族はたえず商に狩られていました。商に家畜扱いされていた羌族と西方の雄である周が同盟して、商を滅ぼしたのです。

 睪雷隨(沢雷随)に出てくる有の字ですが、もともとは有る無しの有とは少し違う形をしていた別の字ではないかと思います。隨の正字(旧字体)の作りのような、左(左手に工具を持つ)と月(肉)を合体させた字だったのではないかと思うのです。甲骨文字の有とされている字の中には、工に近い字形があります。

 「有」の甲骨文字には「工」に近い字形の物があります。
Cocolog_oekaki_2011_09_16_08_06

 エジプトの菜切り包丁「マハラタ」といい、モロヘイヤをみじん切りにするのに用います。甲骨文字の工系統の有にそっくりです。有の神官もこういう新月型の包丁を使って、羊や牛を解体したのではないでしょうか。

 随の正字(旧字体)、工と有が合体した形をしています。(あるいは左と月が合体した形をしています)。
Cocolog_oekaki_2011_09_16_05_46

 私が推測する、睪雷隨に出てくる有の字の本来の形です。
Cocolog_oekaki_2011_09_16_04_54
あるいは
Cocolog_oekaki_2011_09_16_04_55
 犠牲の羊や牛を工具で解体するという意味の字があったのではないかと私は思います。屠殺業と料理人を合体させたような職業です。手を使わずに、包丁と長い菜箸で魚をさばく術が祭で披露される神社があります。ユダヤ教やイスラム教では、屠殺の手順が宗教的に細かく規定されています。屠殺と解体は本来神聖な仕事だったのです。

 左と月が合体したような字が睪雷隨に含まれていた名残が「有功に交わる」と考えられます。これはおそらく「有工に交わる」であり、意味を計りかねた後世の人間が工を功に書き換えたのではないでしょうか。

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