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2011年9月17日 (土)

易経勝手読み(三八)・・・地水師

八月二十日

 睪雷隨(沢雷随)が組織化されていない異族を狩る卦だったのに対し、地水師は城を作っているような文明人との戦役を表した卦です。軍は平原を越え、川を渉って敵地に攻め込むので地水師です。

 王三たび命を錫ふとあることから、これは武王が商を討つために諸侯を集め、三回目にして初めて攻め込んだことを指していると推測され、この地水師は特に武王が商を滅ぼした牧野の戦いを表しているのではないかと推測されます。

師が出るには律を以てす
師は中に在り
王三たび命を錫ふ
或を師するには尸(かたしろ)を輿ぐ(かつぐ)
師は左が次ぶ(さけぶ)
田り(かり)して有が禽にす
執を利して言ふ(ちかふ)
長子師師
弟子尸を輿ぐ
大君の命あり
國を開き家を承く
小人を用いる勿かれ

出陣するときには鼓笛隊を鳴らして送り出す
祭肉を中軍に掲げる
偉大なる王は三度出陣を命じられた
国に攻め込むときには祖先の位牌を担ぐ
戦うときには工具を左手に持った神官が叫ぶ
狩り(演習)をして神官が鳥を網で捕まえる
獲物を傷つけてその血をすすって団結を誓う
長子が祭肉を高く掲げて進軍し
弟たちは祖先の位牌を担いで進む
(商に復讐することは)偉大なる大君の遺命である
敵国の城門を破り、敵の神殿を譲り受ける
占領軍の大将には器量十分の人物を抜擢せよ

 尸とは死体のことですが、死体は死体でも自分に関わりのある親族の死体です。そして重要な祭や戦争などでは、祖先のかわりに祖先の霊が乗り移ったかたしろ、よりしろを祖先の代理として用いました。これも尸で表します。礼記によると、葬式では死者の孫が死者の代理として葬式を執行したとあります。

 出雲神話ではワカヒコという神様が死んだ葬式に、ワカヒコの異母兄弟、もしくはワカヒコの妻の兄であるタカヒコが、ワカヒコそっくりの姿で現れるという話がありますが、これは葬式にて死者に似た人がかたしろとして死者の代理役を務めて客をもてなす古い習俗を表した神話です。

 あまりにそっくりであったので、客はワカヒコが生き返ったと驚きます。タカヒコは死者と間違われたことを怒って、殯屋を破壊してしまいます。

 なんだか不謹慎な神話のように見えますが、全て古い習俗に合致しています。主人が亡くなった家、或いは死体を安置した殯屋は穢れていますので、破壊しなければなりません。だからタカヒコの行動は乱暴に見えますが、古代の習俗に合致しています。古代の葬儀には死者の復活を祈る手順がありますので、客がワカヒコが生き返ったと驚くのもまた古い習俗なのでしょう。

 字統によると輿とは運動会の騎馬戦のように人を担ぐこととありますので、実際に戦争や祭では、神様の代理を務める人物(たいていは少年です)を担いだのかもしれません。神様役の稚児を背負ったり、御輿に乗せて担ぐ風習は日本中に残されています。

 武王にはたくさんの兄弟がいました。武王は大将を示す祭肉を掲げ、兄弟たちが位牌を担いだのでしょう。

 敵国を滅ぼすような大戦は祖先からの重大な恨みを晴らす場合に限られました。国を頻繁に滅ぼすようになったのは、春秋時代に入ってからです。地水師の爻辞では戦役を起こしているのが王で、しかしその王は大君(王よりも地位が低い)の遺命だといっていますので、王でなかったのに後から王になった一族となりますので、やはり周の武王だと思います。

 この大君というのは古公亶父、王季、姫昌(文王)のいずれか、或いはその全てでしょう。

 家を承けるというのは、相手の神殿を占拠して、その祭祀を継承するという意味です。商や周や大和朝廷は、敵を屈服させても根絶やしにはせず、祭祀を吸収することで服属を誓わせました。これが古代の征服の形だったのでしょう。

 田猟という言葉があるとおり、田とは古くは狩りを表す字でした。狩りが軍隊の演習の意味を持っていたのは世界共通です。禽とは獲物を網で捕まえることを意味しています。雷天大壮は立派な羊を網で捕まえる卦でした。生贄に用いる獲物は無傷で捕らえなければならなかったのでしょう。

 「師は左が次ぶ」とありますが、これは睪雷隨(沢雷随)で推測した左と月が合体した文字ではないかと私は思います。
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 易経などかなり古い時代に成立した書物を解明する場合には、左、有、工、随などの字は通用する(混同されている)可能性を考慮に入れる必要があるでしょう。

 大壮は訓練された勇士、もしくは勇士が狩りで捕らえた獲物です。では大有とは何でしょうか?

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