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2011年10月17日 (月)

易経勝手読み(四十七の下)・・・火風鼎

九月二十一日

鼎顚趾
 ここから火風鼎の爻辞に入ります。私の分析では、火風鼎の爻辞に出てくる鼎の内、初六と九二の鼎は原易経にも入っていた字で、それ以外は天地否と火風鼎が養蚕を表す句であることが忘れ去られてから、火風鼎に無理矢理合わせるために付け加えられた字です。
 趾とは足の指のことで、この場合は繭のことです。足指と繭はとても似ています。繭から糸を取り出すために、繭を鍋に入れて煮ます。
 顚趾とはザルにでものせられた繭をひっくり返して鍋に入れるという意味です。繭を熱すると糸がほぐれて取り出しやすくなります。煮えた湯の中の繭から糸口を取り出して、絹糸を引き出します。

利出丕
 これは繭から丕(蚕の蛹)を取り除くという意味です。

得妾以其子
 かわいそうですが、煮られた蚕の蛹(さなぎ)は死んでしまいます。これを女の子宮と胎児にたとえているわけです。妾(子宮=繭)を得るために、中の子(蚕の蛹)を犠牲にするという意味です。
 絹糸は蚕の命と引き替えに得られるので、養蚕が盛んなところには必ず蚕を供養する馬頭観音やオシラス様などの神様が祀られています。ちなみに蚕が馬にたとえられることが多いのは、眠の時に頭をもたげる様子が、長い首が立っている馬に似ているのと、馬のように大量に餌を食べるからです。

鼎有実
 糸を取り出すと実(蚕の蛹)が鍋の中に残ります。蚕の蛹は貴重なタンパク源で、佃煮にして食べたり、鶏の餌にしたりしました。日本でも蚕の佃煮は缶詰で売っています。最近増えた中国人がやっている中国料理屋では、蚕の炒め物がメニューにあることがあります。

蛾仇有疾
 火風鼎に出てくる我は蛾です。成虫の蚕です。
 仇とは配偶、メスのことです。仇が敵を意味するようになったのは戦国時代以降です。疾とは矢傷、すなわちアザのことです。
 蚕のメスは幼虫の時に黒い斑点があります(ない種類もあります)。非常に便利な特徴で、これによって卵を産むための蚕を一定数取り分けておくことができます。全部煮てしまったら卵を産む蚕がいなくなってしまいます。もちろんオスも一定数残しますが、家畜化された蚕も野生の蚕と繁殖ができます。実は雑種の蚕の方が体力が強く糸も美しいことがあり、現在では積極的に野生種と家畜種の交雑が行われています。

不蛾能即耳革
 不蛾は成虫ではない、すなわち幼虫のことでしょう。耳革とは蚕の腹脚と尾脚のことです。これは昆虫に六本ある足とは別の物で、腹の筋肉が変形して脚状になった物で、蚕はこの腹脚と尾脚を使って桑の葉に張り付き、移動もします。本来の足はあまり機能しません。

其行塞
 塞とは工という工具を重ねた状態です。蚕は棚にざるを重ねて、そのざるの上で飼うのが一般的です。これを筐もしくは筥と呼びます。これは蚕を飼う蚕棚を表しています。

雉膏不食
 第五齢の蚕は十分に太り白さが増すと食べるのを止めて繭を作る準備に入ります。水雷屯で見たように膏は白さを表現するのに使われており、ここでも白く太った蚕をキジのアブラのようだと言っています。ただ、雉子のアブラは少し黄みがかっています。確かに食べるのを止めた蚕は少しくすんだ白色です。

折足覆公[食束]
 蚕は眠の前に足下に多めに糸を吐いて、腹脚と尾脚でこの糸をつかんで身体を固定します。身体を固定しないとうまく繭が吐けません。きれいな繭を作ってもらわないと、糸がきれいにほどけません。
 ちなみに蚕が眠の前にはく繭にならない糸が本来の意味の「真綿」です。植物の綿ではありません。

其形渥
 渥とは水を含んでツヤツヤとしたという意味の字です。繭を作る直前の蚕は身体が透き通って半透明状になります。

黄耳
 蚕の幼虫の頭にある眼状紋です。黄色をしていて、耳のようにも見えます。

金鉉
 蚕の幼虫の身体に付いている半月紋です。薄い黄色をしています。

玉鉉
 蚕の幼虫の気門のことでしょう。昆虫は腹にあいた気門という穴から呼吸をします。丸いので玉鉉なのだと思います。


 以上のように、天地否と火風鼎は蚕の生態と糸繰りを詳細に記録した卦です。ここまで当てはまるのですからこの二つの卦は養蚕で間違いないでしょう。

 否(丕)とは花のめしべです。蚕の幼虫をめしべにたとえたのでしょう。

 養蚕の過程で鼎(鍋)が使用されます。それで易に八卦を当てはめた人は、この養蚕の説明の後半部に鼎を当てはめたのでしょう。その後、これが養蚕を表していたことが分からなくなり、折足や黄耳に鼎の字が付け加えられてしまったのでしょう。

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