易経勝手読み(五十)・・・火地晋
九月三十日
晋の字の意味は前進することと言われていますが、これは進の字と音が通用することによる仮借で、本来は鋳型に溶けた金属を流し込んで鏃(やじり)を作る象形文字です。
茲介、衆允、角は鏃を表す句です。維用伐邑はすぐにわかるように、矢で城を攻めることを意味します。
鼫鼠;[鼠石]鼠(せきそ)は詩経にも登場する生物で大きい鼠と推測されていますが、実際の所は種の特定はできていません。漢字の鼠はモグラの類も含みます。ですので、これは石のように固い鱗を持ち、大型のモグラのような体型をしているセンザンコウではなかろうかと思います。センザンコウの鱗は大変鋭く、鏃のような形をしています。
前段は鋳型を組み、溶けた青銅を流し込んで、鏃を作る冶金術です。鋳型は石や粘土で作りますので地、それに溶けた金属を流し込むので火、合わせて火地晋です。
受茲介福于其王母は、青銅がきれいに固まることを祈る呪文でしょう。甲骨文には、王とともに多介父・多介子というお供の神様を祀った記録が多く残されているそうです。鏃は一个(一介)で数えますので、これは矢を神格化した隨神でしょう。
其王母は鏃を作るための鋳型の神様ではないかと推測されます。鏃だとわかりにくいですが、これが尊(器)や銅鐸の鋳型だとすぐに分かります。冶金は石で彫った外型の中に、粘土で作った内型(内子)をはめ込み、そこに溶けた青銅を流し込んで作ります。
冶金の手順は袋の中に液体を流し込み、固まるのを待って取り出す、これは、性交や母胎を連想させます。鏃はその母胎たる鋳型からたくさん生まれるので多介と呼ばれたのでしょう。多介父は矛や剣、多介子は矢の神様ではないでしょうか。
晋する如く摧むる(せむる)が如く
罔で孚らふ(とらふ)
晋する如く愁ふる如く
茲介よ其王母の福を受けよ
衆り允がる(あつまりつながる)
晋すること鼫鼠の如し
晋は其れ角
維れを邑を伐つに用ふ(もちふ)
責め立てるように火を焚いて青銅を溶かす
鋳型を組む
注意深く青銅を流し込む
鏃よ其王母の福を受けて固まれ
繋がった状態の鏃が鋳型から取り出される
それはまるでセンザンコウの鱗のようだ
鏃を角のように研ぐ
できた矢は城を攻めるのに使用される
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