易経勝手読み(五八)・・・水地比
十月二十八【勤労感謝の日】【小雪】
水地比の六三には比之匪人とあります。この句は天地否の卦辞にも登場しました。天地否の卦辞には否之匪人とあります。天地否は絹糸を作るお蚕さんを表す卦でした。
水地比の九五には顕比とあります。白川静は字統で否定していますが、説文解辞では顕を蚕の繭の意味と解釈しています。金文には丕顕という句が頻出しますが、意味は失われています。私が考えるに丕(否)とは蚕の繭玉のことであり、丕顕とは絹糸のように美しいという褒め言葉でしょう。
私の推測では比もまた商が神聖視した動物です。乃ち亀です。蚕は空を飛ぶから天地否、亀は水陸両用なので水地比です。なぜ比が亀を意味するかというと、比には「ひさし、おおい」という意味があるからです。庇(ひさし、かばう)・屁(肛門)・批(平手打ち)・妣(母方の親族)など、どれも庇う、守るという意味を持っています。亀は甲羅(比)を持つので比です。
孚有り之を比ふ(おほふ)
孚有り缶に盈つ(みつ)
終わり来たりて他有り
之を比ひて内よりす
比は人に匪ず(あらず)
外は比なり
顕比なり
比は首无し
捕まえられたら甲羅に隠れる
甲羅は箱状で身体が入っている
身体の後ろには蛇のような尻尾
甲羅から手足が出ている
比は動物である
(亀卜に用いる)外骨は比である
蚕と亀は神聖な動物
亀は首が短い
缶とは酒を飲むための器で、ビールジョッキのような形をしていました。亀の甲羅が入れ子状になっていることを表しているのでしょう。
他とは蛇のことです。亀の尻尾のことでしょう。
字統によると、金文に亀の甲羅を外骨と表現している例があるそうです。ですので外は比なりもまた亀の甲羅をさしています。
比之无首は文字通り、亀の首が短いことを言っています。
九五の「王用三駆失前禽、邑人不誡」は意味が不明です。亀卜に用いる亀の甲羅には、王の馬車を引く駿馬と同じくらいの価値があるという意味かもしれません。
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