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2011年11月19日 (土)

易経勝手読み(五七)・・・雷風恒

十月二十四日

 雷風恒は田の神である夋(しゅん)に天候の安定を祈る祭祀です。夋とはム(すき:鋤)を頭にした神像です。日本の大和盆地から鋤の形をした仮面が発掘されています。これは夋の仮面かもしれません。

 恒とは弓張りの月の象形文字で、月の満ち欠けのように、絶えず変化しながら同じ循環が絶えることなく続くことを意味する字です。雷と風が順序よく回ってこそ、豊かな収穫があります。ですので雷風恒です。

浚ること恒なれ(あめふることつねなれ)
其の徳恒ならざれば
或いは羞を之に承ぐ(ささぐ)
田に禽无からしめよ
其の徳恒ならば
振るうこと恒なれ

夋よ雨を順調にふらせてください
夋が霊力不足で天候不順であるならば
夋に羊の肉を捧げましょう
田から害鳥を追い払い
夋の霊力が満ちて天候が回復すれば
夋(鋤)を絶え間なくふり下ろして耕しましょう

 羞は睪地萃(沢地萃)で触れたように、羊の肉を神に捧げることを表した字です。

 面白いことに、日本語では雨も鋤も勾玉もすべて「ふる」ものです。私たちの祖先は震動と繰り返しに生命を見いだしたのかもしれません。時もまたふるもので、神を喜ばせるための演芸、神楽もまたふる(ふり)をするものです。

 字統によると竣工の竣という字は蹲踞するさまを表しているそうなので、夋は東夷の神様である可能性が高いです。

 藤村由加の「古事記の暗号」(新潮文庫)では、須佐之男命を変化しながら循環する雷風恒の神だとしていましたが、確かにそうかもしれません。

 天と地の間を雷と風でかき回すことが須佐之男命の神格です。しかし人を滅ぼすほどは暴れることはありません。時には自然は人の営みを破壊し尽くしますが、それによって汚れが流れ去り、土砂が運ばれて新しい土地が生まれるのです。日本の自然は雷風恒の自然であり、絶え間ない循環の中に実りがあるのでしょう。

 従来の解釈では恒は夫婦の道を表す卦と言うことになっています。これは振→娠という連想からだと考えられます。また農耕儀礼と生殖は容易に結びつきます。水の循環が実りをもたらしますが、これは女性の月のものを連想させます。浚には井戸の水をさらうという意味がありますが、これもおりものを連想させます。

 雷風恒の卦は、月のものが順調であり、徳(男性の精力)が満ちることによって、女性の胎内に生命が宿り振るう(羊水が揺れる、赤ちゃんが子宮を蹴る)というように解釈をすることも可能です。ただし娠という字は新しい字ですので、本来の意味は田の神への祈りだろうと思います。

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