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2011年12月28日 (水)

易経勝手読み(六八)・・・辰はイルカ

十二月四日

 さて「辰」の本当の意味は何でしょうか?十二支では辰は「たつ(龍)」を意味します。龍は黄河にもかつていたであろうヨウスコウアリゲーター(ヨウスコウワニ)を表した象形文字であることは乾為天と坤為地で説明しました。

 青木良輔の「ワニと龍」では「辰」の字もワニのことだとしているのですが、私は「辰」は同じく支那の川に棲息していたヨウスコウカワイルカではないかという説を提唱したいです。

 辰の甲骨文字は下のような形をしています。
Cocolog_oekaki_2011_11_20_13_48

 従来の解釈では、この甲骨文字を二枚貝とその身と見なしたのですが、わたしは三角形をイルカの口吻(クチバシ)、左側の上下に伸びた二本の棒をそれぞれ背ビレと胸ビレ、右側の払いを尾ビレとみなして、カワイルカを意味しているのではないかと推測したいです。

Cocolog_oekaki_2011_11_20_13_52

 イルカと二枚貝、どちらが「辰」という甲骨文字に似ているでしょうか?どう考えてもイルカです。あるいは別の解釈もあるかもしれませんが、貝でないことだけは確かです。

 ヨウスコウカワイルカは、中国の長江(揚子江)に棲息していたイルカで、体長は2.2〜2.5m、体重は160kg前後、クチバシが長く30cmもあります。濁った水の中で生活しているので、目は退化し、コミュニケーションは声に頼っています。野生での寿命は24年程度とされています。

 元々生息数は数千頭と少なかったのですが、ここ30年間の長江流域の急激な開発と水質汚染により数を減らし、長江では絶滅したことが2006年に宣言されましたが、洞庭湖に150頭ほど生き残っているらしいという情報もあります。

 淡水に棲息するイルカは他にアマゾンカワイルカやガンジスカワイルカがいますが、ガンジスカワイルカも絶滅の危機に瀕しています。アマゾンカワイルカは数万頭いて絶滅の心配は今のところありませんが、ダム建設や金鉱山による水銀汚染によってアマゾンカワイルカの生存も脅かされつつあります。カワイルカはイルカ類の最も古い種とも言われ、保護が急がれます。

 辰をカワイルカと解釈すると、辰をつくりに持つ字もすんなりと理解できます。カワイルカは「震動、繰り返し」と「ピンク色」という一見無関係に見える二つの要素を見事に具備している生物だからです。

 ヨウスコウカワイルカの身体は薄いピンク色をしています。ご存じの通り、イルカは弧を描いて水面を低く飛び跳ねるのですが、これはあまり空高く上ることがない赤い星のアンタレスを連想させます。だからアンタレスは辰星であるのです。

 「辰」に「ふるう・震動」という意味がある点についてですが、これはイルカが飛び跳ねる様からの連想です。

 畑を耕すときにお百姓さんは、鍬を振り上げ、振り下ろすと繰り返しながら前に進みます。これはイルカの繰り返し飛び跳ねながら前に進んでいく様子と似ています。それにカワイルカは春に子供を産み育てますので、これもまた農業と結びつきやすいと言うことになります。「農」という字はこのイルカの特徴を耕す動作に当てはめた文字です。

 イルカの声はよく響きます。そこから「震」という字が導き出されます。

 イルカは群れをなしますし、声でコミュニケーションを取ります。ですので「賑」という字が導き出されます。

 イルカは特徴的なクチバシを持っていることから「唇」という字が導き出されます。それに人間の唇はカワイルカの体色と同じピンク色です。

 カワイルカの薄いピンクと灰色がグラデーションになった体色は明け方の空の色と似ていますので「晨」です。

 草刈りの道具である鎌や石包丁はイルカのクチバシとそっくりの形をしています。だから「くさかり」で「辱」となります。イルカのクチバシのような鎌を振るうので「振」です。

 食用の生肉として「脤(ひもろぎ)」という字があるのも、陸棲の牛や羊と比べて、水の中に住むイルカの方がまだ寄生虫が少なくて、生肉として食べるには安全だったからという意味があるのでしょう。脤が重要視されていることから、イルカの肉は最上級のお供え物だったのかもしれません。

 蜃気楼は水面と空気中の温度差によって光の進む方向が変化し、水面に対岸や島影の像が浮かび上がる現象です。「蜃」はその蜃気楼を発生させる妖気のことを古代人が表した字ですが、これはイルカが水面すれすれに飛び跳ねる様子と、像が浮かび上がる様子を繋げた言葉でしょう。

 また支那には「野鶏入水為蜃」(雉子が水の中に入ってハマグリとなる)という意味不明な伝説があるのですが(礼記、春秋左史伝、逸周書、夏小正)、これは古代の支那人が、水面を飛び跳ね、クチバシを持つイルカを鳥の仲間と考えた名残なのかもしれません。「蜃」はハマグリではなくてイルカなのでしょう。後に「蜃」の意味が分からなくなってハマグリと解釈したのだと思います。

 また王の寝所を意味する「宸」という字があります。古代でも希少な生物で、賢く、鳥のように飛び跳ねることもできるイルカに、人々は神々しさを感じていたのかもしれません。同じく王宮の中で龍の像を安置した部屋を意味する「寵」という字があります。宸と寵はペアの字と考えられます。古代の王宮では水の神であるカワイルカとヨウスコウワニの像を安置していたのかもしれません。やがて宸は王の寝室を意味するようになり、寵は王が信頼する臣、あるいは愛する女性を意味する言葉となりました。

 以上のように「辰」という字が意味するのはヨウスコウカワイルカであると考えられます。暖かかった数千年前には黄河にもカワイルカが棲息していたのかもしれません。

 さて最後に「辰」はイルカであるという解釈のもと、震為雷を解明していきます。

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