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2011年12月10日 (土)

易経勝手読み(六三)・・・坎為水、離為火

十一月十六日

 坎為水と離為火も乾為天と坤為地同様に元々一繋がりの章句です。坎には墓穴、祭祀のために犠牲を埋める祭祀抗という意味があります。離為火の最後の句「獲匪其醜」の醜は金文の図章では墓室を表す亞字の中に描かれることが多く、その図章は亞醜形と呼ばれて、葬送儀礼に関する字であろうと推測されています。

 他にも坎為水に出てくる険もまた神霊を守るための防御を表す字であり、且は父祖であり、寘は屋内に安置された遺体であり、離為火にも焚如、死如、棄如という句や、出涕沱若(鼻水と涙が滝のように流れる)という句が並ぶなど、この二つの卦は墳墓と葬礼に関する文章であることが推測できます。山風蠱、地睪臨(地沢臨)もまた葬送を表す卦でした。坎為水と離為火は大規模な墓と葬送、おそらく王者の死を表す卦です。

坎為水(王の墓)

坎を習ふ
坎臽に入る
坎に険有り
之を来ること坎坎として
険は且の枕するところ
坎臽に入る
樽酒簋
缶を用いて貳へる(そへる)
納れて(いれて)自ら勺せしむ(しゃく)
牗する
坎盈たず
祇既平らかなり
徽に纆を用いて係る(しばる)
叢棘に寘
三歳得ず

墓壙を掘る
墓壙に入ると
墓壙には羨道がある
羨道を通って地下に入っていくと
父祖が眠る玄室に至る
墓壙に入り
酒と御馳走
それにジョッキを添え
自分で酒をつげるように柄杓も入れて
墓に埋める
その段階ではまだ遺体を葬らない
お供えによって地神を満足させる
準備が整った墓を黒い紐で囲い立ち入り禁止にする
その時点では遺骸は殯屋に安置されている
三年間埋葬はしない

離為火(王の葬儀)

然を履み錯す(ならす)
之を敬にす
(黄離)
日昃きて(かたむきて)之を離れる
缶を鼓ず(うたず)して歌う
則ち大いに[老至]之嗟する
突なる如く、其れ来るが如し
焚くが如く、死するが如く、棄てるが如し
涕沱出でて若す
戚にて若嗟する
王用いて出征す
嘉有りて首を折る
獲は其れ醜に匪ず

犠牲に捧げる犬を焼き、土に埋める
これは人身御供の身代わりである
(ちょうせんうぐいす:錯簡?)
日暮れ時に先王との別れの儀式を行う
打楽器は鳴らさずに歌う
大いに声を張り上げて嘆く
なぜ突然この災難がやってきたのか
我が身が焼かれるようだ、
 自分が死んでしまったように悲しい
 王は私たちを棄てるのか、と
鼻水と涙を滝のように流す
飾った戈をふるって踊りを捧げる
新王が現れる
穀物の捧げ物の前に稽首する
獲は醜の祭儀とは異なる

 古代支那の墳墓というのは、地下に深い穴を掘って作りました。そのため地面から墓に向かって、細く長い羨道(死者の通り道)がつけられることになります。羨道の両脇には険しい絶壁が切り立つことになります。険というのはおそらく羨道とその先にある玄室(棺桶を安置する部屋)ではないかと考えられます。

 樽、簋、缶はすべて酒宴で使用される食器です。墓掘りとは地面を大幅に改変することですので、祇(くにつかみ)を鎮めるための祭が墓で開かれたのでしょう。

 三歳というのは父の喪の期間ですので、この卦が高位な人物の葬儀に関する物であることが分かります。寘は屋内に安置された腐乱死体、叢棘は牢屋です。この場合、あばらや(殯屋)に安置された先王の遺骸を指していると考えられます。

 殯屋は粗末な建物と相場が決まっていました。それは猛禽や野獣に遺骸を食べてもらうためです。チベットでは、野獣にきれいに食べてもらえたことで死者が成仏したと見なす風習がありました。古代の支那にも同様の考えがあったのでしょう。

 後半の離為火は王の葬儀を表す卦です。離為火の前半は死者に犠牲をささげること、中段は死者のために嘆く哭礼をすること、後半は新しい王が死者に祈りを捧げて先王の霊力を受け継ぐ儀式を表しているのではないかと考えられます。

 獲匪其醜は意味がよく分かりませんでしたが、醜は先にも言いましたように、葬儀に関する図章ですので、なんらかの葬礼のあり方を説明する句ではないかと考えられます。

 坎は墓穴で、離は離別を表しているので、その意味で卦と爻辞の間には連関がありますが、水と火は爻辞とほとんど関係がありません。易と八卦は元々無関係であることがここからも分かります。

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