易経勝手読み(六二)・・・乾為天・坤為地
十一月十三日 【大雪】
龍とは長江の河口一帯を棲息地としているヨウスコウワニ(揚子江=長江の河口)のことです。思いついたときには大発見のつもりだったのですが、想像上の生物の龍の起源がワニだという説は意外と一般的だったみたいで少しがっかりしました。
「ワニと龍」青木良輔著 平凡社新書
~「辰」を食べる~竜はおいしく食べられる(ダイヤモンドオンライン)
伝説や噂に見え隠れする空想生物
ヨウスコウワニ(ヨウスコウアリゲーター)は支那の長江河口の湿地帯を棲息地にしているワニです。大きさは1.5〜2mになります。食物は貝や魚や小動物です。
従って、温厚なワニで人間や牛馬を襲うことはほとんどありません。けれども、都市化によって生存に適した湿地帯を減らし、農薬の多用により餌をなくし、貝を探すために水田に入り込んで稲を踏み荒らすために害獣とみなされて駆除されたりするなどされてしまったことで、一時期は百頭近くまで数を減らしてしまいました。
そのため80年代以降はジャイアントパンダ並みに保護されて、今では数百頭まで回復したそうです。
日本では札幌の円山動物園で見ることができます。
のんびりとしたワニで昼間はぼーっとひなたぼっこをしています。円山動物園で夜の餌やり体験の話がありましたので、夜行性のようです。冬になると冬眠をします。また興奮すると首の下の下顎腺という臭腺をむき出しにして威嚇するそうです(これがいわゆる龍の逆鱗)。
易経は黄河〜淮河あたり、河北の文化圏で作られた書物です。現在のヨウスコウワニの棲息地からはかなり離れていますが、古代はもっと温暖でしたので、黄河や淮河の流域にもワニがいたのかもしれません。日本でも数十万年前の地層からワニの化石が見つかっています。
潜む龍
龍が田に在るを見る
(君子は)終日乾乾たり
夕べには惕るるが若く或いは躍りて淵に在り
(飛ぶ龍が天に在り)
亢ふ龍(あらがふ)
群を見る
龍は首无し
霜堅冰を履む
直方にして大
丕を習にす(不習)
章を含む
嚢を括る
黄色い裳
龍野に戦ひて
其の血玄黄たり
ワニは冬眠をする
ワニは餌を探して水田に侵入する
昼間はひなたぼっこをしている
夕方になるときょろきょろと這い回り
川に飛び込んで泳ぎ回る
(飛ぶ龍が天にあり:後世の付け加え?)
怒ったワニは喉を突き出す
群れている
ワニは首が短い
凍った地面を歩くようにそろりそろりと歩く
神官のように縦の目をしており
磔されたような体つきをしており、大きい
藁で巣を作って卵を産む
身体に模様が入っている
袋を括ったように首がくびれている
子供は黄色い縞があってフリルのようである
激しく動いた後に
黄土色の血(汗?涙?)を排出する
乾とは吹き流しが風にひらめいているという意味の字です。ワニが身体を平べったくさせてひなたぼっこをしているさまを、吹き流しのようだと表現したのでしょう。あるいは洗濯物を乾かしているようだという意味かもしれません。君子は後付けでしょう。
ヨウスコウワニに限らず、ワニは夜行性だったと思います。夜行性の動物は、昼間はじっとしていて、夜になると活発に動き始めます。首をきょろきょろさせて周囲の安全を確かめ、川の中を素早く泳ぎます。
飛龍在天も後世の付け足しだと思います。
履霜堅冰以降は坤為地の爻辞ですが、これもワニの特徴を記した文章です。乾為天と坤為地は元々一繋がりの文章であったと考えられます。
直というのは呪力を高めるために、目の縁に入れ墨をした神官の眼力を表す字です。黒く隈取りし、縦方向にも線を入れました。これがワニの縦に細い瞳に似ていると言っているのでしょう。
あるいは直や縦目は、元々は古代支那で最強最大の生物であったワニを真似した呪いだったのかもしれません。
方は磔にされた死体です。悪霊を防ぐために国境におかれました。べたっとしていて、手足が横に伸びたワニの身体を表しています。
不習は本来は丕習ではないかと思います。丕は天地否で見たようにお蚕さんの繭のことです。ですから卵のことをさすのでしょう。「習」という字は祝詞を収めた箱をの上に鳥の羽を配した象形文字なので、卵が羽根や草などで覆われた鳥の巣のことを意味しているのではないかと考えられます。wikipediaの説明にあるように、ヨウスコウワニは枯れ草で巣を作ってそこに卵を産みます。
章とは華やかな入れ墨をした身体のことを表す字です。ワニの身体に網状のだんだん模様が入っているのはご存じの通りです。
ヨウスコウワニは頭が大きく、首はくびれており、その後ろのお腹がふくれているので、袋の口を縛ったように見えます。
子供のヨウスコウワニは阪神タイガースのような黄色と黒の縞模様をしています。これを黄色い裳(ドレスのフリル)と表現したのでしょう。
龍は獲物を捕食した後に涙を流すという伝承がありますが、これについても別のふさわしい訳があるかもしれません。
支那の神話によると、どうやら歴史時代に入る前の五千年以上前の中国大陸は温暖で森林や湿地帯が広がっていたらしいのですが、その頃の支那には大きなワニがいて水の生き物の王者のように見えたのでしょう。やがて気候は徐々に寒冷乾燥化して、ワニの棲息地は中原から遠く離れてしまい、神話の中のワニは形を変えて水神となったのだと考えられます。
しかし易経の龍はワニのことであり、易経を書いた人はワニを間近に見ていたと推測されます。易経の漢字の使い方は中原の金文とは異なって一種独特で、山水蒙や水睪即(水沢節)のように東夷の文化を記録した卦もありますので、易経には淮河あたりに居住していた東夷の資料が混じっているのかもしれません。
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