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2012年1月 3日 (火)

易経勝手読み(七十)・・・風睪中孚(風沢中孚)

 以前に考えた風睪中孚(風沢中孚)の解釈はやはり自分でもしっくり来なかったので、もう一度素直な目で原点に帰ってこの卦を解釈し直してみました。易経はナゾナゾ集だという私にとっての原点です。すると、やはりこれもナゾナゾであることが見えてきました。

 まず初九に「有它不燕」とあります。こういう語順の場合、有と不は述語で它と燕は目的語になります。したがってこれは、「蛇に有りて、燕にあらず」と読むのが妥当と言うことになります。次の九ニには「鳴鶴在陰」とあります。これも動詞+名詞という語順ですが、鳴くは自動詞なので、この場合は条件文として解釈するべきでしょう。したがって「鶴が鳴けば陰に在り」となります。両方とも主語を隠した文章です。ナゾナゾらしくなってきました。

 現代語訳を書きます。皆さんもこれが何であるか考えてみてください。ごくごく身近なものです。

それは蛇にあってツバメにはない
それは鶴のように大きな声を出すと隠れているのが現れる
子供はそれをなくしても増える
ノコギリはそれを持っていててお酒が好き
それは隙間なく並んでいる
それは敵がやってくると
太鼓を叩くようにぶつかり
その次に退く
そして泣くように水を出し
歌うように音を立てる
(月が満月に近くなる:意味不明)
馬は衰えている(欠けている)
吊り上げられた獲物のような形をしている
(幟がはためくような音を立てる:意味不明)

 分かりましたか?

 そうです、このナゾナゾの答えは「歯」です。

 「蛇にあってツバメにはない」というのは秀逸です。どう考えても蛇よりもツバメのほうがいろいろな物がついています。ツバメには翼があり、尻尾も二本あり(見かけですが)、足があります。けれどもツバメには歯がありません。

 それに「燕」という字には「丸呑み」という意味があるので(今でも医学用語で誤嚥と言ったりします)そこで勘の良い人はこれが歯に関連することだと気がつくでしょう。燕が飲みこむことを意味するようになったのは、燕の雛が親からもらった餌を丸呑みする様子から派生した意味でしょう。鳥は基本的に食物を丸呑みしますが、古代支那人にとって身近な燕は特に印象深かったのだと思います。

 「鶴が鳴けば陰に在る」は多少苦しいのですが、大きく口を開けると隠れていたものが現れると解釈しました。

 「其れ子は之を和する」は和を「増える」と考えれば、子供は増えるとなります。乳歯が抜けて永久歯が生えてくることでしょう。

 「我」の原義は鋸です。鋸と言えばギザギザの歯ですので、柔軟な脳みそを持つ子供ならばこの辺りで正解が分かるでしょう。

 「得敵、或鼓、或罷、或泣、或歌」は食べ物を噛み砕いて咀嚼する様子です。敵とは食べ物のことです。上の歯と下の歯がぶつかり合う様子が太鼓を叩くようです。次にもう一度噛むために上の歯と下の歯は離れます(罷る)。そして唾が出てきます(泣く)。そうするとくちゃくちゃと口の中で音が出るでしょう(歌う)。

 「月幾望」は意味が分かりませんでした。歯が顎に半円状に並んでいることを意味しているのかもしれません。「馬匹亡」は馬は前歯と奥歯だけあって間の歯がない状態を表しているのだと考えられます。

 誰でも抜けた歯を見たことがあると思いますが、根っこが伸びています。「有孚攣如」は、この歯の形を兎とか鹿が吊るされているようだと表現しているのでしょう。

 「翰音登于天」もあまりよく意味がわかりませんでした。後からの付け足しかもしれませんし、歯をカチカチと鳴らすと、バッタの羽音のような音が鳴ると言う意味かもしれません。

 どうしてこのほほえましいナゾナゾが風睪中孚(風沢中孚)になったかですが、春秋時代になって、答えの「歯」が分らなくなった後に、翰音登于天から軍隊の中軍の旗が連想され、まずこの卦は「中」と名づけられたと考えられます。その後に戦国時代になってから儒教的解釈が加わり、儒学者は「孚」を「真心」と誤解しましたので、「中心(心の底からの)真心」となって風睪中孚(風沢中孚)となったのでしょう。

 しかしこの場合にも、儒学者ではなくて易者の方の解釈に古い意味が残されているのです。

 占いでは風睪中孚(風沢中孚)は人と人がくっつく、そして現代の日本の易者の中にはこれは男女がキスをしている状態だと解釈する人すらいます。二つのものが共同作業で仕事をするのはこの卦の本来の意味である「歯」から派生した解釈です。上の歯と下の歯がぶつかって食べ物を噛み砕くからです。卦辞の「豚魚(イルカ)」についても、「イルカが口笛を吹く」と解釈されることが多いのですが、歯→口という連想が感じられます。

 風睪中孚(風沢中孚)、とてもスマートなナゾナゾだと思います。

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