« 青銅器の爵は蒸留器だった? | トップページ | 易経勝手読み(七三)・・・震為雷の補足 »

2012年1月11日 (水)

易経勝手読み(七二)・・・辰の語源の補足

十二月十八日

 白川静の説にばかり依存するのは偏っているので昨日八重洲まで図書券をはたいて甲骨文字と金文の資料そしてイルカとワニの資料を探しに行き、「古代文字辞典、甲骨・金文編」(城南山人編、マール社)と、「甲骨文字小辞典」(落合淳思、筑摩選書)、「クジラ・イルカハンドブック」(S・レザーウッド、R・リーヴス著、吉岡基、光明義文、天羽綾郁訳)を買ってきました。ワニの資料はなかったです。

 「古代文字字典」には甲骨文字と金文の表記例が多数掲載されており、「甲骨文字小辞典」には白川静を初めとして甲骨文字の語源の学説が複数載っています。甲骨文字が流行っているせいか便利な本が出るようになりました。

 さて「甲骨文字小字典」の「辰」の字の語源を見てみましょう、

 辰はかつては、蜃の初文で貝殻から肉が出ている形とする説が有力視されていた。しかし、後述する農では、辰が農具の形として使われている。加藤・白川は、両者を折衷して蜃器(貝殻で作った農具)とするが、辰に含まれる「△」は甲骨文字では石の初文にあたり、貝殻を意味して使われることはない。従って、辰は石製の農具と考えられる。

 とあります。さすがに貝という説は今では信じられていないそうですが、当然のことながらイルカは影も形もありませんでした。

 しかし落胆することはありません。辰に含まれているという石の頁を見てみましょう。

 許慎(説文解辞)は厂を崖の意味とし、多くの学者がそれに従っているが、甲骨文字では崖の意味では使われていない。
 殷代には、石ケイと呼ばれる三角形の打製打楽器が使われており、厂(△)はこれの象形である(図は殷墟から出土した石ケイ)。
 厂は「石」の初文に当たり、甲骨文字の部首としては、石や石器の意味で用いられている。

 とあります。本文中の図にある石ケイを書き写してみました。頂点が鈍角の二等辺三角形をしています。

Cocolog_oekaki_2012_01_09_12_11

 さて「クジラ・イルカハンドブック」や他の本(お金が足りなくて買えませんでしたが)に掲載されているヨウスコウカワイルカの写真から全体像を書き起こすとこのような姿になります。

Cocolog_oekaki_2012_01_09_12_19

 イルカの原始的な姿を残していると推測されるカワイルカ類の背ビレは、鎌形ではなくて鈍角の二等辺三角形をしているのです。

 古代文字辞字典の甲骨編に出てくる辰の初文はこれです

Cocolog_oekaki_2012_01_09_12_23

 上の横棒は水面を表していると推測されます。そして左上に「甲骨文字小字典」が「石ケイ」と推測している「△」があります。その下に縦棒があり、平行線が二本あり、長い縦棒があります。

 私が推測するに、この△はヨウスコウカワイルカの背ビレであり、前の縦棒はあの長い口吻(クチバシ)、平行線は胴体、後ろの縦棒は背ビレでしょう。

 甲骨文字では口吻が下を向いてしまっているのは、亀の甲羅や動物の骨をひっかいて書いていた甲骨文字の場合繊細な線の表現ができないのでそうなってしまったか、川底の餌を探しているカワイルカの姿、もしくは水面から飛び上がっている姿を写したためではないでしょうか。

 辰にはもう一つ矢印の形をした字形の系統があるのですが、これは上で説明した詳しい字形が簡略化し、背ビレの部分と口吻の部分が一体化した字形なのでしょう。

Cocolog_oekaki_2012_01_09_12_37

 従って、「辰」に関する最新の研究成果は私の「辰=ヨウスコウカワイルカ説」を補強する物であると言えるでしょう。

« 青銅器の爵は蒸留器だった? | トップページ | 易経勝手読み(七三)・・・震為雷の補足 »

易経・春秋」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/173723/53693861

この記事へのトラックバック一覧です: 易経勝手読み(七二)・・・辰の語源の補足:

« 青銅器の爵は蒸留器だった? | トップページ | 易経勝手読み(七三)・・・震為雷の補足 »

2017年8月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
無料ブログはココログ