十二支の秘密(ニ)・・・丑午酉戌
十二月九日
次に丑午酉戌をご説明しましょう。これは生物ではなく、祭祀の道具です。丑は組みひも、午は杵、酉は酒甕、戌は矛です。午酉戌については甲骨文字の一般的な解釈に従っています。
現在でも「杵」という字がありますので、午が杵(きね)であるというのは納得しやすいでしょう。古いタイプの杵は二人の人間で向かい合って持って突きました。ですので午を旁に持つ字(忤、迕)には「遇う、逆らう」という意味があります。また脱穀によって、臼の中の穀物がばらばらになるので「乱れる」という意味もあります。
さらに杵がもつ「向かい合う」という意味は、十二支の真ん中で、一日の時間で表した場合、お昼に当たる「午」としてふさわしいことが分かります。前も後も同じだけの時間があるので、向かい合って突く「午」というわけです。
杵は穀物を脱穀するために必要な道具ですし、日本の神楽で足を踏み鳴らして田畑から邪悪な霊を追い出すように、杵を使う祭祀があったのだろうと白川静は推測しています。
酉も「酒」という字がありますので、これも分かりやすいでしょう。酒がお祭に欠かせないことは言うまでもありません。
戌が飾りが付いた矛であることは、甲骨文字の研究で明らかになっています。成、戒、いずれも懲罰権を現す矛の前で、厳かに誓いをすることを意味する文字です。
そして丑ですが、これはほとんど用例がなく白川静も匙を投げています。甲骨文字はこのように爪を立てたような形をしています。
丑を旁に持つ字は「紐」くらいしかありません。この字形は甲骨文字で手を表す「又」もしくは「有」に似ているので、白川静はなにか道具を掴んでいる状態と解釈しています。しかし私には三つ編みをしているように見えます。丑という字は三つ編みそのものです。
紐は細い糸を寄り合わせて太い紐を作ることですので、「紐」から素直に連想して「丑」をお祭で神主や巫女を飾り立てるための組みひもと解釈したいです。古代人が「結ぶ」ということに重要な意味を見出したのは日本人であれば容易に理解ができます。神道でも仏教でも、飾り紐は重要な意味を持たされています。結ぶと言うのは契約のしるしです。
また紐によって複数の要素が組み合わさることを意味することもあります。こいのぼりの五色の吹流しなどはそうです。五色の紐(旗)で世界を表すシンボライズは陰陽五行にも取り入れられ、支那や朝鮮にもあります。
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