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2012年1月21日 (土)

易経勝手読み(七五)・・・火水未(火水未済)

十二月二十八日【大寒】


 水火齊(水火既済)と火水未(火水未済)は共通した句を複数持っています。そのため一見すると一繋がりの文章のように思えますが、全く別の事柄を扱った卦です。ナゾナゾにはそっくりの文章だけれど答えは違うというのがあります。あんまり出来の良い例ではないかもしれませんが、「鼻の長い動物はなあに?」(象)、「鼻が長くてお掃除が好きな物はなあに」(掃除機)?といった具合です。

 火水未の六三には「未済」とあります。この句から未済と既済という卦が生み出されたのですが、これもまた他の卦と同様にナゾナゾの一節です。十二支の謎で見たように「未」の原義はブナの大木に寄生するヤドリギという植物です。

 ヤドリギは樹木に寄生します。樹上に生え、四方八方に枝を伸ばすので成長すると球状になります。ヤドリギも植物なので、もちろん歩いたり飛んだりすることはできません。ではヤドリギはどのようにして高い樹木にとりつくのでしょうか?

 ヤドリギの種は粘着質にくるまれています。ある種の小鳥はヤドリギの実を好んで食べることが知られており、ヤドリギの実から酒を造ることができるとも言われているので、その実は栄養価が高いのでしょう。

 鳥というのは消化管が短いので食べ物は余り消化されずに形を残したまま糞として出てきます。ヤドリギの種は鳥の排泄口からあまり消化されずに、粘着質を残したまま臍(へそ)の緒のように垂れます。そうして鳥の体にとりついて別の樹木まで運ばれるのです。

 ここで齊が出てきました。臍です。鳥は糞と卵が出てくる穴が同じです。ヤドリギを排泄している鳥の写真がありますが、鳥がへその緒が付いた赤ちゃんを産んでいるようにも見えます。ですので六三は「未だ済らず(わたらず)」ではなく、「未は齊なり」(ヤドリギは臍の緒のように鳥の尻から垂れる)となります。

 初六の「濡其尾」はヤドリギの種が鳥の尻尾に付着する様子。九二の「曳其輪」は球状に成長したヤドリギのことです。ここはわざと水火齊(水火既済)と同じ句を挟むことによってナゾナゾとしての面白味を加えているのです。

 九四「震用伐鬼方、三年有賞于大国」は火水未が火水未済となってから水火既済とのバランスを取るために加えられた句と考えられます。「甲骨文字小字典」によると用はおそらく太鼓のことで、太鼓で脅して鬼方を攻めたのでしょう。

 ヤドリギは古代支那でも目出度い植物とされていました。西洋でもクリスマスの縁起物として取り扱われており、ヤドリギはなぜか世界中で目出度い植物と見なされているのです。冬にも葉を茂らせていますし、球状になるので太陽を連想させるからでしょう。従って六五「君子之光、有孚」もまたヤドリギのことを讃えた句であると考えられます。

 上九「有孚于飲酒、濡其首、有孚失是」は火水未のなかで一番難解な爻辞です。直訳すると「捕虜を捕まえたら宴会だ、捕虜の首を濡らす(漬ける)、捕虜を捕まえたらこれ(ヤドリギ)を失う」となります。

 さて意外なことにヤドリギは酒と関わりの深い植物です。ヤドリギから酒を造ることができるそうです。また日本の造り酒屋は新酒を仕込んだら軒先に杉玉(酒林)を吊します。たくさんの杉の枝をボールにさしこんで作る球状のオブジェです。最初は杉の葉で緑色をしていますが、やがて枯れて茶色になり、酒がおいしくできあがる春頃には茶色になります。緑色の杉玉は冬の風物詩です。

 この杉玉からすぐにヤドリギが連想されます。これは私の勝手な想像ではなく、ヤドリギを知っている人はみな同じ感想を抱きます。本来はヤドリギを吊したのでしょう。

 オーストリアやドイツのホイリゲ(居酒屋)では新酒を入荷した合図として軒に赤松の枝を吊します。ワインの新酒が入るのは初冬です。これをプッシェンと呼びます。またクリスマスの輪の飾りはこのプッシェンの変形とも言われています。またオーストリアやドイツの造り酒屋は輪の形をした看板を掲げることが多いです。

 ヤドリギはクリスマスになくてはならない飾りです(クリスマスパーティー会場に飾られたヤドリギの下にいる女の子にはキスをしてもいいという言い伝えを聞いたことがある人は多いでしょう)。

 このようにクリスマスと正月と造酒にはユーラシアの東西で不思議な共通点があるのです。

・造り酒屋の新酒を仕込んだ印の杉玉(ヤドリギそっくり)
 =新酒のワイン入荷の印のプッシェン(赤松)
 =輪状の造り酒屋の看板
・門松=クリスマスツリー、リング
   =パーティー会場のヤドリギ
・常緑樹=松=ヒイラギ=ヤドリギ

 これはおそらく常緑樹がめでたいから、これはすぐに出てくる結論です。さらに球という共通点があるのは冬至→太陽の復活を表しているからです。

 そしてなぜ酒とヤドリギが結びつくかというと、ヤドリギはゆっくり育つ植物だからです。

 ヤドリギは一年で一節(1cmくらい)しか伸びません。ヤドリギは数ヶ月くらい水がなくても生きていける生命力が強い生き物なのですが、成長は遅いです。早く伸びすぎて宿主を殺してしまうことを避けているのでしょう。数十年生き続ける宿主と同じくらいの寿命をヤドリギは保ちます。その間伸びでもせいぜい直径50cmくらいにしかなりません。

 昔の酒の醸造はものすごく時間がかかりました。雑菌が入らないようにするには、酸素を減らして酵母の成長を遅らせるしか方法がなかったからです。ヤドリギの成長の遅さと時間をかける古い醸造法が結びついたのだと思います。

 ですので上九は捕虜を捕まえて宴会をしている様子です。

 「首を濡らす」の首は捕虜の首でしょう。捕虜をお風呂に入れると言うことはないでしょうから、これは日本の戦国時代に討ち取った首を酒に入れて保存したように、古代の支那でも首を酒に漬けて保存したのでしょう。生首保存に使うので「是を失う」となります。

 なんとまあ易の最後の爻辞は討ち取った首の保存法なのでした。けれども火水未(火水未済)から日本と古代支那と欧州の正月と酒造の文化が根本のところで繋がっていることが分かるのです。

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易経・春秋・漢字」カテゴリの記事

コメント

先生の易解釈は すごい・
易の解説は何処に書かれているのでしょう。

http://www.sizennhou.biz-web.jp 杜河 鎮雄

はじめまして。

書き込みが短文過ぎるため、よくわからないのですが、杜河鎮雄様の易解釈をお勧めなのでしょうか?

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