十二支の秘密(四)・・・子亥
十二月十一日
十二支の解明の最終回は一番初めの「子」と一番最後の「亥」です。「子」の元の字はややこしいですが、意味は難しくありません。
このわけの分からない怪物のような字が十二支の「子」の元の字です。「字統」によるとこの字は穀物の神様を意味する夋畟(稷)に似た形をしているそうです。十二支の一番最初の文字なので、これは神様を意味する字なのでしょう。
次が十二支の最後の「亥」です。
この形は豚や象の甲骨文字と似ているので、犠牲として捧げられた動物の形ではないかとされてきました。
しかし「亥」を旁として持つ字には咳、該、孩、劾、欬などがありますが、どれにも動物と言う意味はありません。これらの字が共通して持つ意味は「大きな声」です。そして声を出すのは動物でも楽器でもなく人間に他なりません。
「咳」は文字通りせきをすることですし、「該」は声が広く響き渡ることですし、「孩」は赤ちゃん(赤ちゃんは大きな声を出して泣く)、「劾」は弾劾というように人前で大きな声で非難をすることですし、「欬」もまた大きな声という意味です。どれにも「大きな声」と言う意味があることが分かります。
私が考えるに、亥とは神主が竹簡や布などに書いた祝詞(のりと:神に捧げる言葉)を読んでいる状態を表した文字ではないでしょうか。亥の甲骨文字もなんだか表彰状を読み上げている人のように見えないこともありません。
亥の甲骨文字は動物のあばら骨を表している豚・象よりも、神官や神の奴隷を意味する天に近い。
白川静の文字学によると、古代支那では祝詞を守ることや読み上げることが重要視されていたそうです。日本の「言霊(ことだま)」と同じで、言葉は必ず実現すると言う信仰が、商や周の時代にはあったらしいです。
したがって、亥は神の前で、神主が祝詞を大きな声で読み上げて願いの成就を祈ることを表す象形文字ではないかと考えられます。
以上の考察から、十二支は神、神聖な動植物、祭具、そして神に祈る神官ではないかと私は考えます。神に始まり、動物、植物、道具、そして人間と言うようなおおまかな流れもあります。十二支は商(殷)の時代に編み出された、時を計るための重要な言葉ですので、このように祭祀に関する言葉をちりばめた構成となったのでしょう。
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