« 橋本不況の再現 | トップページ | 「ユーロ危機回避」の皮肉な結果 »

2012年2月26日 (日)

易経勝手読み(八二)・・・水山蹇

二月五日

 水山蹇は困窮や寂寞とした状態を表す卦です。

 現在の漢字を見ていてはこの卦は解けませんが、蹇と寒と莫(幕・漠・慕・募・暮・墓)は甲骨文字や金文ではよく似た形をしています。いずれも草を表す「屮」が四つ並んでいます。この屮が四つ並んだ字は草むらを表すと推測されています。

寒・蹇
Cocolog_oekaki_2012_02_25_23_00


Cocolog_oekaki_2012_02_25_23_01

初六 往くは寒、来たるは誉
六二 王臣は蹇蹇なり
   身(みおも)の故にあらず
九三 往くは幕、来たるは反
六四 往くは漠、来たるは漣
九五 大なるは慕、朋来たる
上六 往くは募、来たるは碩

初六 貧乏人は施しを受けに行く、
   優秀な人には褒美が向こうからやってくる
六二 宮廷の人達は長い裾の袴を引きずって歩く
   身重(妊娠中)のわけでもないのに
九三 陣を整えて遠征する、向こうから攻めてくるのは反乱
六四 潮が引いたら砂浜が現れる、潮が満ちると波が打ち寄せる
九五 有力者は慕われて同胞が訪ねてくる
上六 人材を募集して立派な人物がやってくる

  寒という漢字は建物を表す宀(ウ冠)の中に屮が四つ並び、中心に足の大きな人がいます。草が生えているようなあばら屋の中で足をむきだしにしている人を表しており、そこから寒いとか貧乏という意味が出てきました。

 蹇という字は甲骨文字や金文にはない比較的新しい文字です。似たような漢字に褰がありますが、両方とも袴の長い裾を引きずるとか、着物の裾を掲げるという意味です。寒という字には大きな足があります。蹇というのはおそらく寒という字から派生した文字でしょう。寒いから裾の長い暖かい服を着るという意味が派生して、裾の長い服を引きずるように歩く様子を蹇で表すようになったのでしょう。

 屮四つの中に日があるのが莫です。草原の中に日が沈むことを表した文字で、そのことから暗い、寂しい、という意味を持つようになりました。さらに暗いから手探りで探すという意味が派生し、探すということから見本や魅力のある人という意味が派生しました。

 水山蹇の初六・九三・六四・九五・上六は対句になっています。蹇と反対の物、あるいは同類の物を並べることによって、蹇の内容を推理させる凝ったつくりです。では原易経で蹇(屮四つ)が意味する概念を推理していきましょう。

 初六では誉れ、つまり褒美はもらいに行かなくても向こうから来ると言っています。その反対ですから、貧乏人が金を無心して回ることを蹇と言っているのでしょう。現在の漢字で言えば「寒」の状態です。

 六二は宮廷の大げさな礼儀作法を皮肉った爻辞です。躬はおそらく身で妊娠した女性を表します。宮廷の人達は大げさに着飾り、身重の女性のようにゆっくりともったいぶって歩くという意味です。現在の漢字で言えば「蹇」です。

 九三の反の古い意味は反乱です。厂は石の武器を表します。石の武器を手に持って向かってくるので反乱です。それに対してこちらから準備を整えて攻めるのは遠征です。軍隊のテントや幔幕を「幕」といいます。正式な軍隊は本陣に幕を張って戦争をします。江戸幕府の幕府は将軍の本陣という意味です。

 六四の連はおそらく波が打ち寄せる水際を意味する漣で、六四は海浜を表しているのでしょう。引き潮になると波が往き砂浜(漠)が現れます。満ち潮になると砂浜に波がやって来ます。易経には海が全く出てこないとされてきましたが、そんなことはありません。それは後世の中国人が海を忘れたので易経に出てくる海の記述が分からなくなっただけです。

 九五の大とは有力者のこと。有力者は慕われて、朋(同郷の人)が訪ねてきます。

 上六の碩は碩学というように、優秀な人材のことです。優秀な人材が来るのですからこれは人材募集のことでしょう。中国では在野の人材を求めることが君主の重要な仕事とされていました。中国は縁故主義が強いですが、身分によらない人材抜擢も多い国です。君主が辞を低くして優秀な人を招けば、人材は向こうからやってくるのです。

« 橋本不況の再現 | トップページ | 「ユーロ危機回避」の皮肉な結果 »

易経・春秋」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/173723/54076438

この記事へのトラックバック一覧です: 易経勝手読み(八二)・・・水山蹇:

« 橋本不況の再現 | トップページ | 「ユーロ危機回避」の皮肉な結果 »