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2012年2月12日 (日)

電波経済学三度(二)・・・債務はエントロピー

一月二十一日

 人間が生産活動をする前と後では必要なお金の量は必ず増加する。

 この世にエントロピーがなければ、人間社会で必要とされるお金は

 一定期間に生産活動で必要とされる原料費+一定期間の設備の損耗量

 であるだろう。しかしそれではエントロピーが排出できない。そのため実際には、必要とされるお金の量は

 一定期間に生産活動で必要とされる原料費+一定期間の設備の損耗量+人間の活動で増加したエントロピー

 となる。この最後の項であるエントロピーを排出するためのお金をどこかから持ってこなければならないが、無から有は生み出せないのでどこかから持ってくることはできない。

 無いものをあることにする、これが借金である。

 社会全体の中で誰かが借金をすることによって、社会全体としてお金の量が増える。これによって初めて人間社会はエントロピーを排出できる。

 儲けを認めない経済体制が持続しないのはエントロピーの排出に失敗するからだろう。エントロピーが国の中にたまる一方なので、目に見えてゴミがたまったり、人間を抑圧したり(広義の設備の損耗)、人口が減少したりする。

 エントロピーは排出されるだけ、目の前から無くなるだけなので、地球環境全体としては無くならない。海に流れたり、地面の底に埋もれたり、発展途上国に押しつけられたりするが地球全体としては減らない。いつか宇宙にゴミを捨てられるようになる日が来るかもしれないが、それでも宇宙全体としては減らない。

 人間が儲けを得て何をするかというと、まず蓄えができたと安心し、上等な食べ物を食べたり、きれいな服を着たり、家を立派にしたりすることで、これはどれも自分の周囲の環境からゴミや熱といった低レベルのエネルギーを排除して、質の高いエネルギーを集めようとする努力なので、エントロピーの排出であると言える。

 おそらく人間社会の中で最も質の高いエネルギーとは人間のやる気なんだろう。儲けとは畢竟この人間のやる気を高めるために必要なのだ。

 人間が活動するためには、活動に投入された原材料とエネルギー量以上のお金を必要とするので、社会全体としてお金を増やさなければならない。しかしその増やさなければならないお金というのは、廃熱なのでどこからも取り返すことはできない、ストックに代価ができない。つまり借金と言うことになる。

 かくして人間が活動すると、社会全体としては必ず債務が増加する。債務というのは人間活動のエントロピーの蓄積なので減ることはあり得ない。

 日本やドイツのような貿易黒字国では債務が減っているように見えるのは、代わりに輸入国が債務を増やしてくれるから。輸出というのは外国に熱を排出して、エントロピーが低い原材料すなわち化学エネルギーを取り入れる活動なので、冷房と同じ。

 冷房というのは熱機関としては非常に効率が悪いので、貿易黒字国が増えると世界全体としては債務(エントロピー)が急激に増加する。中国やインドの発展と欧米における不良債権の急激な増加は表裏の関係にある。

 一所懸命に働いて金を貯めるのは一見良いことのように思えるが、世界全体としてはエントロピーを増大させるので必ずしも正しいこととは言えないのが分かる。そして金もないのに身の丈に合わない消費をしてくれる人がいないとあくせく働くこともできない。

 貿易黒字国を攻撃してきた米国の世界認識は熱力学的に正しい。

 近代以前の社会であまり債務が目立たなかったのは、エントロピー排出を自然に押しつけていたからだろう。それでも大型哺乳類の絶滅とか、エジプトやメソポタミアの砂漠化といった人間活動を原因とした自然破壊は古代にも発生している。

 むしろ近代よりも古代の方が、取り返しのつかない自然破壊は多く発生しており(近代の自然破壊は人間によって復帰が可能なレベルが多い)、逆説的に思えるが、エントロピーを債務という形で顕在化させた資本主義社会の方が自然に対しては優しいと言える。

 昔の農法はまともに肥料を使わないので、土地を徹底的に搾取します。灌漑技術も未熟なので、土地に塩分が蓄積します。一万年以上前の狩人も周囲の動物を食べ尽くしたら、次の場所に遷って同じように徹底的に狩りを続けました。それに対して現代は面積的にはかつて無いほど広範囲で自然が破壊されていますが、現状復帰が不可能なほど自然は破壊されていません。人間がいなくなれば元に戻る程度の自然破壊です。古代にあった自然破壊の方が深刻だったのです。

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コメント

べっちゃんさん、こんばんは。
指摘するエントロピーを現在に置き換えると「排出権取引」と読めてしまうのは錯覚でしょうか?
本来は、べっちゃんさんが指摘する自然破壊の補正というはずが、単なる金融取引と化したのはなぜなんでしょうね。

それは「排出権」が石油ではなくて原子力を「正貨」とする金融商品だったからではないでしょうか?

原子力はトータルで見たら石油よりもエントロピーを排出しますので、石油よりも質の悪いエネルギーです。石油よりも質の悪い物を石油よりも価値がある物として売ったのですからこれは詐欺であり不良債権です。価格が下がって当然です。

純然たる石油の先物であればこうはならなかったでしょうが、それはただのドルペッグですよね(笑)

EUが編み出した温室効果ガス排出権は、原子力発電と火力発電の先物取引の組み合わせです。

原子力発電の先物を買い、火力発電の価格で決算するのがカラクリでした。

決算まで原子力発電が安ければEUの勝ち、決算までに火力発電が値下がりすれば米国の勝ちでした。

はからずもサブプライムローンで石油高騰がくずれ、福島の事故で原子力発電の価格が上昇したのでとどめを刺されました。

原子力発電は今後も増加は続くと思いますが、排出権は復活しないでしょう。

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