荀子 巻第十五 解蔽篇第二十一 その二
閏三月二日
曲直を正すのでもなく、治乱を治めるのでもなく、人道を正すのでもなければ、いかにその言説はもっともらしく巧みであっても、人々に何の利益ももたらさず、また全然働きをなしえなくても少しも人に損害を与えない。
しかるに、このことを知らずにただもっぱらこの無用な怪説を唱え詭弁を弄して互いに擾乱しあっているだけである。
すなわち悪賢くて弁が立ち、厚かましくて恥を知らず、正義心なくわがままで、みだりに弁説をふるって利を求め、慎みがなく、礼儀をわきまえず、互いに相手を陥れようとするのである。
これが乱世における姦悪な者どもの言説であって、広い世界で言説を唱えている者の多くは、この種の手合いどもである。
古伝に「言葉の分析のみを明察とし、物を多言することのみを弁説と見るがごときは、君子はこれを賤しむ。いかに博覧強記であっても聖王の道に合わない物は、君子はこれを賤しむ。」とは、このことを言った物である。
乱世姦人の説では、いかにこれを行っても聖王の道をなすに益なく、これを求めても聖王の道を得るに益なく、これを念じても聖王の道に近づくに益はない。
したがって邪説は遠くこれを捨て去って己自身の妨げとはせず、しばらくも己の心を侵させず、過去のことに拘らず、未来のことにくよくよせず、一局に拘泥して自ら心を苦しめることなく、時に当たれば動き、物来たれば応じ、事起これば処理する。このようであれば、世の治乱、事の可否の分別は、きわめて明らかになるのである。
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