詩経勝手読み(七)・・・庭燎
閏三月十五日 【立夏】
庭燎(にわび)は夜通し開かれる神事を詠んだ詩とされてきました。しかしこの詩の秘密めいた雰囲気は神事と言うよりは男女の睦言のように私には思えます。
そう、庭燎は男女の夜の逢瀬、夜這い、セックスを詠んだ歌でしょう。間違いありません。
この詩には「夜如何其、夜未央」「夜如何其、夜未艾」「夜如何其、夜鄉晨」という問答が三回繰り返されています。現代語訳すると「夜はどうなった?まだ宵の口です」「夜はどうなった?まだまだ終わりません」「夜はどうなった?もうすぐ朝です」となります。伝統的な解釈では祭の進行状況を尋ねたと言うことになっていますが、そんなタイムキーパーみたいな会話をわざわざ詩に読み込んだりはしないでしょう。男女がベッドの中で逢瀬を楽しむ会話と考えるのが自然です。
第一聯と第二聯に出てくる「鸞聲」とは鈴の音のことです。鈴はご存じの通り、振ることで音を鳴らします。高くて可愛い音を出します。同じような音を規則正しく鳴らします。性行為の時に女性が上げる声の表現としてぴったりです。
庭燎(にわび)とは庭を照らす明かりのことですが、恋に燃える二人の心と瞳を表していると考えるのが自然です。なぜなら第三聯で朝が来て、庭燎は輝きを失うはずなのに、「庭燎有煇」更に燃え上がるとあります。この庭燎が松明とか行灯の火ではないことはここから明らかです。
詩の末尾に「觀其旂」旗を見るとありますが、そそり立つ旗ですから、男性のペニスでしょう。
というわけで相聞の歌に詳しい人であればこれが恋の歌、それもセックスを詠んでいることは一目瞭然です。学者も分かってはいたのでしょうが、詩経の格式を保つために、夜の神事などと言う苦しい解釈をせざるをえなかったのでしょう。
夜如何其 明け方までどのくらいだろうか
夜未央 夜はまだ始まったばかりです
庭燎之光 庭の灯りに火がともされる
君子至止 あの方がいらっしゃった
鸞聲將將 号令のような甲高い鈴の音が響く
夜如何其 明け方までどのくらいだろうか
夜未艾 まだまだ宵です
庭燎晣晣 庭の灯りはあかあかと光る
君子至止 あの方がいらっしゃった
鸞聲噦噦 しゃっくりのような絶え間ない鈴の音が響く
夜如何其 明け方までどのくらいだろうか
夜鄉晨 もうすぐ夜明けです
庭燎有煇 朝になっても二人の心の灯火は輝きを失わない
君子至止 あの方がいらっしゃった
言觀其旂 再会を誓いその旗を見た
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