詩経勝手読み(八)・・・鴻雁
閏三月十九日
鴻雁は兵士と土木作業員と巡査の苦労を詠んだ詩です。公務員の悲哀を歌った歌ではないかと思います。改まった歌ではなく、くだけた歌ではないかと思います。
鴻雁は大空を飛ぶ白鳥と雁です。なぜ白鳥で公務員であるかというと、自由に空を飛ぶことができる鳥に対する憧れでありこれは反渝です。ああ白鳥のように自由に空を飛びたいという宮仕えをする人の嘆きです。
鴻鴈于飛 白鳥や雁が飛び立つ
肅肅其羽 その羽根を羽ばたかせて
之子于征 私の息子は戦地へ出征し
劬勞于野 荒野で苦労して(戦死した)
爰及矜人 若い娘さんや男の方
哀此鰥寡 この身寄りのない年寄りや未亡人に哀れみを
鴻鴈于飛 白鳥や雁が飛んで
集于中澤 沼地に集まる
之子于垣 私の息子は堤防を築く
百堵皆作 あの堤防も、あの城壁も作った
雖則劬勞 苦労するといっても
其究安宅 おかげで枕を高くして寝られるようになった(報われる苦労だ)
鴻鴈于飛 白鳥や雁が飛んでいる
哀鳴嗷嗷 ガァガァと哀しく鳴いている
維此哲人 立派な人(政治犯)を捕まえるときには
謂我劬勞 ご苦労様ですねと声をかけてくれる
維彼愚人 愚か者(詐欺師)を捕まえるときには
謂我宣驕 何であんな立派な人を捕まえるのかと怒られる
第一聯と第二聯は分かりやすいのですが、第三聯が難しかったです。
伝統的な解釈では第三聯の「維此」を「これこれ」と呼びます。よく分からない語があったら、代名詞と言うことにして誤魔化してしまうのは、学者の悪い癖です。
易経の天水訟や雷水解、および詩経の六月で見たように「維」とは容疑者を縛り上げることであり、裁判の法廷を表す語です。
哲人は立派な人なのに、それを捕まえたときには「ご苦労様です」と周囲からねぎらわれて、愚人を捕まえたときには「宣驕(思い上がるな)」と周囲から叱責されるとこの人は嘆いています。
おそらくこの巡査は物がよく見えていて、真実を言う賢人に、支配者が無実の罪を着せて悪者に仕立てて捕まえることを糾弾しているのでしょう。そして、そのように民衆を扇動する側に回っていた、頭の中身は空っぽのポピュリストの化けの皮がはげて捕まえる時には、騙されていた人達から、司法が逆に非難されてしまうことを嘆いているのでしょう。
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