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2012年5月23日 (水)

詩経勝手読み(十二)・・・白駒

陰暦 四月三日

 白駒は古来より意味不明とされている詩です。秦風の蒹葭と商頌の那には白駒と似たような句が挟まれており、商頌の那はどうやら殷(商)王朝の廟前で祖先をお祀りするときに歌われた詩であるらしいことから、白駒は周王に忠誠を誓いに来た、服属した殷の遺民をもてなす際に歌われた詩ではないかと推測されてきました。

 白駒の第一聯と第二聯は、牧場で馬を放牧する様子でおり、難しくありません。問題は第三聯で、公や侯、則ち諸侯に呼びかける句があり、しかもその次には、仕事をさぼって遊び歩くとか叛意を懐くとか不穏当な語句が並んでおり、この詩を読む者を惑わせてきました。

 この詩経勝手読みでは、「〜なはずはない」とか「昔からこう読んできた」といった予断は排除して、できるだけ文意に沿って詩を解釈していきます。白駒の第一聯と第二聯が牧場の馬が登場するのなら、それは牧場の馬のことを詠んでいるのであり、第三聯が不穏当であるのならば、この詩は不穏当な内容を含んでいるのだと判断します。

 この一見関連のない前半部と第三聯がどのように繋がっているのかは、第四聯を読めば分かるようにできています。第四聯では、無人の谷(痩せ地?)で馬が熟成されていない馬草を食べる様子が歌われており、音信を絶やさないようにしなさいという戒めが結末に書かれています。前半の牧人がいなくなって、馬は快適な牧場から、荒れた谷に追いやられたように読めます。

 おそらく白駒は力の衰えた周王や中央の役人が、諸侯の離反を非難する詩です。前半では伊人(牧童)に馬(諸侯)が従っている平和な状態を歌い、第三部で周王朝の支配体制が弛緩して、諸侯が王の命令を聞かなくなったことを嘆いています。そして第四部では、王をないがしろにすると、いずれ困ったことになるぞと諸侯を脅しています。

 確かに周王と諸侯の服属関係をテーマにした歌ですが、殷の遺民が服属を誓う歌と言うよりは、周王の支配が緩んだことを嘆く歌と見なした方がよいと思います。

皎皎白駒 輝ける白い馬が
食我場苗 牧場で新芽を食べている
縶之維之 綱を張った牧場の中で
以永今朝 朝からのんびりと
所謂伊人 いわゆる牧人(支配者)は
於焉逍遙 遠くまで回って目を配る

皎皎白駒 輝ける白い馬が
食我場藿 牧場で豆の蔓を食べている(新芽を食べ尽くした)
縶之維之 綱を張った牧場の中で
以永今夕 朝から夕方まで
所謂伊人 いわゆる牧人(支配者)は
於焉嘉客 こうやってお客(諸侯)をもてなす

皎皎白駒 輝ける白い馬よ
賁然來思 過去を思い出して恥ずかしくならないのか
爾公爾侯 並み居る諸侯たちよ
逸豫無期 いつまで遊んでいるのか
愼爾優游 それは王宮への参勤を遠慮しているのか
勉爾遁思 それとも反乱の計画を練っているのか

皎皎白駒 輝ける白い馬が
在彼空谷 無人の谷にいる
生芻一束 食べ物は未熟な馬草一束だけ
其人如玉 人の心は玉のようなものだ
     (ヒビが入ると取り返しがつかない)
毋金玉爾音 絶えることなく王宮に参勤し
而有遐心 逆心を懐かないようにせよ

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