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2012年6月23日 (土)

詩経勝手読み(二二)・・・楚茨

陰暦 五月四日

 楚茨は盛大なお祭りを歌った詩です。社会が安定していた西周中期の詩とされていますが、私の分析では小雅の谷風は東夷の詩であるので、東夷のお祭りを詠んだ詩でしょう。

 家族で集まってワイワイ騒いで酒を飲んでいる所など、どことなく日本のお祭りによく似ています。長いけれど、愉快で楽しい詩です。春秋時代のお祭りの喧噪が伝わってくるようです。

楚楚者茨 繁ったイバラを
言抽其棘 摘んで活けます
自昔何為 ずっと昔から
我蓺黍稷 我々は五穀を育ててきた
我黍與與 作物は天に向かって伸び
我稷翼翼 ぐいぐいと翼を伸ばす
我倉既盈 倉庫は収穫で満ちている
我庾維憶 稲束も数え切れないほど
以為酒食 さあ飲んで食べよう
以饗以祀 御馳走をご先祖様にお供えしよう
以妥以侑 お供えを勧めて
以介景福 福を授けてもらおう

濟濟蹌蹌 美しい角、きれいな蹄
絜爾牛羊 あなたの清い牛と羊を
以往烝嘗 生贄にしましょう
或剝或亨 さばいて煮込んで
或肆或將 お皿に並べてお供えする
祝祭于祊 祠にお祭りする
祀事孔明 祠を立派に飾り立て
先祖是皇 ご先祖様も輝く
神保是饗 神がこの御馳走をお受けになって
孝孫有慶 一族に幸いがありますように
報以介福 福を授けてくださいますように
萬壽無疆 絶えることなく万代までも

執爨踖踖 料理を運ぶ足が行ったり来たり
為俎孔碩 俎に肉の塊を載せる
或燔或炙 肉を焼いて焙って
君婦莫莫 煙で男か女か分からないほど
為豆孔庶 お皿がたくさん並ぶ
為賓為客 これはあのお客、あれはこのお客
獻酬交錯 お互いお酒をつぎ合って
禮儀卒度 乾杯もすんだ
笑語卒獲 笑って初物をいただく
神保是格 神のご加護が舞い降りて
報以介福 福を授けてくださいますように
萬壽攸酢 お互いの長寿を祈って酒を酌み交わす

我孔熯矣 もうお腹いっぱい食べました
式禮莫愆 宴会もつつがなく済みました
工祝致告 その時神官がやってくる
徂賓孝孫 祖先とお客様と一族はかしこまり
苾芬孝祀 香り豊かなお供えを
神嗜飲食 神様とともに飲み食いする
卜爾百福 そしてあなたたちに限りない福を授けるというお告げをもたらす
如幾如式 式は終わりに近づく
既齊既稷 生贄も捧げ、神様もやってきた
既匡既敕 滞りなく速やかに終わった
永錫爾極 長く時の果てまであなたに
時萬時憶 幸せを与えましょう

禮儀既備 お祭りは終わり
鍾鼓既戒 音楽も鳴り終わる
孝孫徂位 一族と祖先の位牌
工祝致告 そして神官に告げる
神具醉止 神様も酔っておいでだ
皇尸載起 神のかたしろを立てて
鼓鍾送尸 音楽を鳴らしてお送りする
神保聿歸 神様が最初にお帰りになり
諸宰君婦 お役人様やお百姓が帰り
廢徹不遲 時間通りに皆帰ったら
諸父兄弟 今度は家族だけで
備言燕私 内輪で語り合いながら飲む

樂具入奏 音楽の演奏を楽しみ
以綏後祿 御馳走の残りをいただく
爾殽既將 この料理もあの料理も全部食べてしまった
莫怨具慶 心置きなく喜び合い
既醉既飽 満足行くまで酔う
小大稽首 大人も子供も頭を下げて
神嗜飲食 氏神様と飲食をする
使君壽考 ご主人様が長生きしますように
孔惠孔時 天気が順調で恵みがありますように
維其盡之 尽きることなく
子子孫孫 子々孫々
勿替引之 変わることなく命が繋がっていきますように

 この詩は秋の収穫祭を歌った詩です。祭の主催者は村の有力者、いわば名主でしょう。祖先を同じくする一族(子孫)、中央から呼ばれたお役人(宰)、村の農場主(君婦、夫婦で呼ばれている)が祭に呼ばれています。

 まず祖先に初物を捧げます(第二聯)。そしてバーベキューをし、お酒をつぎ合って乾杯します(第三聯)。現代の宴会ととてもよく似ています。

 第四聯では神官が登場します。どうやらこの神様は祖先とは別の神様のようです。中央の支配者の神様、客神でしょう。この詩はおそらく宋の詩ですので、現人神の宋公から、名主に秋の収穫を祝う使者が来たのでしょう。神官(工祝)は亀卜をして村に福が訪れるだろうと祝います。一種の服属儀礼で興味深い記述です。

 パーティーが終わったら、音楽を鳴らして、まず神様を送り、次にお客様を送ります(第五聯)。お客様が帰ったら家族だけ穏やかに飲み食いします。

 小大というのはおそらく子供も大人も、という意味で、日本のお正月のように、家族全員が神棚の前に整列してお辞儀をしてご先祖様に感謝をしたのでしょう(第六聯)。最後に子々孫々血筋が絶えませんようにとの祈りがあります。

 楚茨で歌われている祭の様子は、日本のお祭りと非常によく似ています。祖先祭祀と中央から送られてきた神様が、習合する興味深い記述も見られます。日本の神道も、このようにして祖先祭祀と、大和や出雲などの有力な勢力の信仰が混じり合ってできたのではないでしょうか。

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