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2012年6月27日 (水)

詩経勝手読み(二三)・・・信南山

陰暦 五月八日

 信南山は水神禹を讃える祭事詩です。禹は夏王朝の伝説的な始祖です。金文の禹は二匹の蛇が絡まった形象をしています。禹には休みなく働いたために体が磨り減ってしまったという伝説があり、これはおそらく禹が蛇の姿をした神だった名残でしょう。

 信南山の第一聯には、「維禹甸之」という不思議な記述がありますが、これはおそらく「維禹匐之」であり綱のように長い体の禹が地面を腹ばうという意味であり、禹が蛇神であったことを意味する記述です。

 四月の舞台である杞は禹の子孫を自称していました。即ち禹を信仰していたというわけです。従って信南山もまた杞の祭で歌われた詩でしょう。

信彼南山 神聖なるあの南の山に
維禹甸之 長い体の禹が腹ばう
畇畇原隰 沼地をならして平らにする
曾孫田之 禹が整地した土地を子孫が田にした
我疆我理 禹は田の境界を区分された
南東其畝 南東向きに畝を作られた

上天同雲 禹は天に上り雲になる
雨雪雰雰 雨や雪を降らす
益之以霢霂 細かい雨が地面を潤す
既優既渥 既に充分地面が水気を帯びると
既活既足 生物は活き活きとする
生我百穀 私(禹)が全ての穀物を生かすのだ

疆場翼翼 畑の作物は翼を伸ばし
黍稷彧彧 五穀は茂る
曾孫之穡 禹の子孫はこれを収穫し
以為酒食 酒食を作り
畀我尸賓 御神体と客神に捧げる
壽考萬年 絶えることなく福がありますように

中田有廬 田の中に見張り小屋があり
疆場有瓜 田の端の菜園で瓜を作る
是剝是菹 瓜を切って漬け物を作る
獻之皇祖 これを天の祖先に献上する
曾孫壽考 子孫たちに長寿を授けてください
受天之祜 天よ福徳を授けてください

祭以清酒 清酒を祭で振る舞う
從以騂牡 赤い馬を
享于祖考 祖先に捧げる
執其鸞刀 湾曲した刀をとり
以啟其毛 生贄を屠り毛を刈り
取其血膋 血と脂を取る

是烝是享 肉を料理して神に勧める
苾苾芬芬 美味しい香りが充満する
祀事孔明 祭が華やかに挙行される
先祖是皇 先祖なる天神よ
報以介福 お返しに福を授け給え
萬壽無疆 絶えることなくとこしえに

 第五聯の騂牡の意味するところが不明です。辞書は「赤い馬」としていますが、毛を刈り取るとわざわざ書いていることから、毛が長い動物と考えられます。バイソンやヤクかもしれません。

 第四聯の瓜を漬け物にする部分も興味深いです。塩だけで作る漬け物は、日本の伊勢神宮で受け継がれているお供えの調理法です。

 しかも楚茨では祭をする名主は、天の神を祖先神だとはしていませんでしたが、信南山の詠み手は皇(天津神)を先祖だと言い切っています。杞の人達はかなり自負の強い人達だったようです。

 蛇神である点や、酒をお供えする部分が、奈良県の大神神社と似ています。やはり杞と古代日本の間には何らかの関連があるのではないでしょうか。

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コメント

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

株入門さん、こんばんは。

感想ありがとうございます。

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