詩経勝手読み(三一)・・・魚藻
陰暦 六月十日
魚藻は西周初期の安定した時代に、周王を讃えた歌と素直に解釈してよいと思います。言葉遊びの要素がある愉快な歌です。
魚在在藻 魚がいる水草にいる
有頒其首 魚のその大きな顔/大きな立派なおひげ
王在在鎬 王様がいらっしゃる、都にいらっしゃる
豈樂飲酒 さあお酒を楽しもう
魚在在藻 魚がいる水草にいる
有莘其尾 その立派な尾/一門は数知れず
王在在鎬 王様がいらっしゃる、都にいらっしゃる
飲酒樂豈 酒を飲んで楽しもうではないか
魚在在藻 魚がいる水草にいる
依于其蒲 蒲に身を寄せている/草葺きの丸い屋根
王在在鎬 王がいらっしゃる、都にいらっしゃる
有那其居 そのお住まいは美しい
この詩は三聯とも一行目と三行目に同じ句が並んでいます。魚在在藻と王在在鎬です。それぞれ魚が水草(住居)にいると、王が鎬京(周の古都)にいる。という意味です。
そしてその間に有頒其首、有莘其尾、依于其蒲がそれぞれ挟まれていますが、いずれも魚と王様両方の意味に取ることができるようになっています。頒は顔という意味とひげ面という意味があり、尾はしっぽという意味と子孫という意味があり、蒲には水辺に生えるガマと丸い草葺き屋根という意味があります。
最初に魚のことを詠み、次いで魚から王の讃歌へと自然に移行するつくりとなっています。王を讃える言葉は、立派なひげ面、子孫がいっぱい、草葺き屋根と非常に素朴です。
おそらくこれは王を讃える民謡、それも周王がそれほど神格化されていない周王朝初期の詩ではないでしょうか。
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