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2012年7月 7日 (土)

詩経勝手読み(二六)・・・瞻彼洛矣

陰暦 五月十八日 【小暑】

 この詩は洛水という川の流れに仮託して武人を追憶した詩です。中国には洛水という川は二つあります。陝西省を流れる洛水と河南省を流れる洛水です。西の方の洛水は西周の都成周を流れ、東の方の洛水は東周の都洛邑を流れています。どちらの洛水と見なすかでこの詩の意味は変わってきます。

 従来は成周の洛水と見なすことが多かったのですが、私は小雅の後半は東夷の詩であると推測しているので、洛邑の洛水と見なします。そうすると、この詩に歌われているのは、洛邑を建設したとされている周初の功臣召公奭となります。

 召公は多数の金文が残されている周初の功臣です。史記では武王の兄弟とされていますが、現在の研究では殷に近い部族だったとされています。殷から与えられた青銅器に名が刻まれているのと、東夷に関連する伝説が多いからです。

 召公には洛邑を建設したという伝説があります。洛邑は西周の副都で、東夷を監視するために作られました。西周が西戎に滅ぼされてからは、周の正式な都になります。

 召公の子孫は河南省の燕(当時は匽・奄と表記)に封じられました。後に遼東に興った北方遊牧民系の燕(当時は匽と表記)という国は、召公を伝説上の始祖にしました。河南省の燕(南燕と言います)と遼東の燕(北燕と言います)の間には直接の関係はないのではないかと言われています。

瞻彼洛矣 あの洛水を見よ
維水泱泱 水が滔々と流れている
君子至止 立派なお方がここに定住し
福祿如茨 殷賑を極める都市ができた
韎韐有奭 赤いマントを羽織った召公奭様は
以作六師 天子の六軍を創設された

瞻彼洛矣 あの洛水を見よ
維水泱泱 水が滔々と流れている
君子至止 立派なお方がここに定住し
鞞琫有珌 玉で飾った美しい鞘の刀を差していた
君子萬年 召公よ永遠に
保其家室 王室を守り給え

瞻彼洛矣 あの洛水を見よ
維水泱泱 水が滔々と流れている
君子至止 立派なお方がここに定住し
福祿既同 福徳が住民に等しく降り注いだ
君子萬年 召公よ永遠に 
保其家邦 王室を守り給え

 春秋戦国の諸侯の系図はかなり混乱しているらしく、斉は元々殷の配下の部族であり、周公旦も本当に武王や成王を補佐していたかも分からず、召公も周の一族ではなく殷の配下の部族であるなど、伝説として残っている系譜と実際の系譜はあまり関係がないようです。

 日本の大名が、無理矢理源氏や平氏と関連づけた系図を作ったのと同じ現象でしょう。

 召公はおそらく、周に協力した殷の有力な部族であり、元は殷の軍隊だった六師をまとめていたのでしょう。

 西周は中期から淮河方面に植民を進め、淮夷と熾烈な争いを繰り広げました。その屯田兵の核を作った召公は、洛邑や山東では伝説的な武将として信仰を集めていたのではないでしょうか。西周には様々な有力な武将や文官がいたことが金文からはわかっていますが、時代を経るにつれて、周公旦や召公奭そして太公望などにそのイメージが習合し、彼等が神格化されていったのでしょう。

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