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2012年8月25日 (土)

詩経勝手読み(三九)・・・白華

 白華は従来の解釈では捨てられた妻が夫をなじる詩とされています。しかし注意深く分析すると、恋人に捨てられた作者は野にいて、不実な恋人は天もしくは宮にいると推測できます。

 第八聯では「平たい石を更に踏みつけて卑しめる」と言っています。どうやら不実な恋人は手の届かない高貴な人の所へ行ってしまい、捨てられた昔の恋人が悔しがっている詩であるらしいと分かります。

 しかも、第七聯で「オシドリはお互い助け合っているのに、この子(不実な元恋人)は良いところがなく、何人もの人に約束をしていた」と言っており、どうもこの不実な恋人は浮気な人であったことも分かります。

 第三聯の滮池・稲田と第六聯の鶖(水鳥)は対応しており、第四聯の樵(きこり)・桑薪・煁(炭焼き窯)・鶴もまた対応しています。どうやら不実な恋人は、平地の人と山地の人の両方と結婚の約束をしていたのに、天・宮に行ってしまったことがわかります。

 捨てられた方は、稲作や炭焼きをしているので、女ではなく男と考えた方が良さそうです。

 そしてこの詩は長年連れ添った伴侶を捨てたというような深刻な詩ではなく、村のアイドルだった可愛い娘が、領主様に見初められてお嫁に行ってしまったよと、やっかみ半分で祝う詩ではないかと思います。多分結婚式などで歌われた祝歌ではないでしょうか。易経の天風姤と一緒です。

白華菅兮 白樺のように美しい肌
白茅束兮 白い茅のように細い足
之子之遠 あの子が遠くへ行ってしまった
俾我獨兮 僕はひとりぼっちだ

英英白雲 美しい白い雲は
露彼菅茅 彼女の手足に置く露
天步艱難 宮仕えは大変だろうに
之子不猶 あの子は深く考えずに行ってしまった

滮池北流 滮池は北に流れ
浸彼稻田 稲田を潤す
嘯歌傷懷 僕は悲しみ歌い
念彼碩人 あの美しい人を想う

樵彼桑薪 薪を集めて
卬烘于煁 炭焼き窯に入れる
惟彼碩人 あの美しい人を想うと 
實勞我心 私の心は身もだえる

鼓鍾于宮 宮から音楽が聞こえたら
聲聞于外 外から歌って返す
念子懆懆 あの子を思うと気持ちが落ち着かない
視我邁邁 もう私のことは忘れてしまったのですか

有鶖在梁 水鳥がやなにとまり
有鶴在林 鶴(コウノトリ?)は林にいる
惟彼碩人 あの美しい人を想うと
實勞我心 私の心は身もだえる

鴛鴦在梁 オシドリがやなにとまり
戢其左翼 身を寄せ合って翼を休めている
之子無良 あの子は不実で
二三其德 みんなに気のあるそぶりをしていた

有扁斯石 平べったい石を
履之卑兮 さらに履んで賤しむ
之子之遠 あの子が遠くへ行ってしまった
俾我疧兮 僕の心を苦しめたまま

 以上の翻訳は3ヶ月前の物ですが、その後国風を分析した結果、この詩は中国古代史に名を残した美女西施を歌った詩である可能性が出てきました。

 西施は越王勾践とその宰相范蠡が、宿敵の呉王夫差を骨抜きにするために送り込んだ美女です。元々薪売りの貧しい家の娘で、川で湯浴みをしているところを范蠡に見いだされたとされています。

 范蠡の特訓で夫差好みの娘に仕上げられた西施は、呉の後宮に送り込まれ、夫差を骨抜きにして、呉を滅亡に導きました。

 西施には将来を約束した恋人がいたという伝説が残っており(それが范蠡で、二人は呉の滅亡の後に駆け落ちしたという伝説があります)白華は西施の恋人が歌った詩なのかもしれません。

 とはいえ、これはおそらく歴史を題材にした歌劇で歌われた詩であり、実在の西施や夫差や范蠡が歌った詩ではないでしょう。

 この詩は炭焼きと湿地がテーマになっており、西施のモチーフに合致します。また、第三聯の「滮池」は春秋時代に越国があった浙江省の滮湖と考えられ、やはり西施のモチーフに合致します。

 西施の脚は美しく、魚が見とれたので「魚釣り美女」と呼ばれたという伝説があり、これまた第一聯で脚を褒めている部分と合致します。(逆に脚だけが欠点であったという伝説もあります)

 車舝は鄭国の夏姫を歌った詩と推測されます。私の研究では詩経国風の周南と召南は春秋の美女とそれを取り巻く人々の歌劇と考えられるのですが、収録に漏れた詩が小雅に入っているのかもしれません。

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