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2012年9月22日 (土)

詩経勝手読み(四七)・・・采蘋

 采蘋は一見すると、水草を摘んで煮込んでご先祖様にお供えをしましょうというただのお祭りの詩のようですが、夏姫の伝説を背景にして分析すると意味合いが変わってきます。

 屈巫の亡命から20年後、屈巫が呉に赴いてから約10年後?の紀元前570年、呉と楚は激突します。おそらくこの頃夏姫は50歳ぐらいで、屈巫は既に死んでいたかもしれません。

 楚王子の子重(羋重)は呉の鳩玆(安徽省蕪湖付近)を占領します。子重は楚王に屈巫を讒言して、屈一族を殺させた張本人です。屈巫が楚から亡命せざるを得なくなった原因も子重と折り合いが悪かったせいでしょう。屈巫にとっては怨敵です。

 屈巫と屈庸の指導によって強力となった呉は反撃します。楚軍を鳩玆から撃退し、楚の領土の駕城(安徽省巣県)まで追跡して散々に破りました。子重は敗戦の責任を取らされて自害したとも、敗戦を気に病んで憤死したとも言われています。こうして夏姫の本懐と屈巫の復讐は成し遂げられました。

 面白いことに鳩玆の戦いには鵲巣のキーワードが3つも出てきます。楚が占領したのが鳩玆ですし、呉が大勝したのが馬車を意味する駕です。そしてこのあたりには巣湖という巨大な湖があります。鵲巣は呉が楚を破った戦いの地名がちりばめられています。

 采蘋もまたこの戦いに関連する詩です。南の河原と湖で雑草を刈って料理をすると言うのは、楚をやっつけることを意味します。楚とはイバラ、雑草という意味の字だからです。

 末尾に登場する、ご先祖様にお供え(楚)をお薦めする「有齊季女」清らかな末娘、とは夏姫のことでしょう。何人もの男を遍歴した夏姫に清らかとは皮肉な表現ですが、夏姫は女の幸せを犠牲にして祖国鄭のために働き、ついに楚に大打撃を与えることに成功しました。そんな彼女を鄭の人は敬愛を込めて「有齊季女」と讃えたのでしょう。

 夏姫の物語は、本来はいかがわしい官能小説などではなくて、楚の脅威にさらされた鄭のか弱い公女が、男たちを手玉にとってついに歴史を動かしてしまうと言う雄大な物語だったのではないかと思います。

于以采蘋 雑草を刈る
南㵎之濱 南の中州の河原で
于以采藻 水草を刈る
于彼行潦 大きな水たまり(巣湖)に行って

于以盛之 刈り取った草を
維筐及筥 竹籠に山盛りにする
于以湘之 そしてこれを料理する
維錡及釜 大きな窯の中に放り込んで

于以奠之 料理した草をお供えする
宗室牖下 ご先祖様の祠の窓の下に
誰起尸之 ご先祖様にお仕えするのは誰でしょう
有齊季女 あの清らかな末娘(夏姫)

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