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2012年9月23日 (日)

天地明察

映画の「天地明察」を見ました。貞享暦を作った安井算哲(渋川春海)とその妻えんの夫婦愛を描いた作品です。

安井算哲は多彩な人物で、囲碁の家元安井家の息子でしたが、跡取りとはならず天体観測や算学、神道の研究などに没頭していました。かといって囲碁の才能がなかったわけではなく、史上最強の棋士本因坊道策に先番でしたので、日本で二番手の打ち手だったことになります。

日本は奈良時代以来、中国から輸入した宣命暦を使っていました。宣命暦はユリウス暦よりは正確でしたが、それでも800年使用する間に2日程度のずれが生じていました。渋川春海は更に正確な授時暦を採用すべきことを天体観測によって証明し、さらに、経度差による時差を東洋で初めて発見し、授時暦に日本と中国の経度差補正を加えた大和暦(採用されたときの元号を取って貞享暦と呼ばれる)を開発しました。

理論計算と綿密な観測によって日本独自の暦を作り出した安井算哲は日本最初の科学者と言えるでしょう。

妻のえんはどうやら架空の人物らしいのですが、若い二人が支え合う姿は爽やかな感動を与えてくれます。

完璧な時代考証も見所です。北極星の観測隊が、歩測をするために変な歩き方をするところや、宿屋や茶屋、料理、寺子屋、算額など非常に正確に再現されており、歴史オタクにはたまりません。

中華料理を食卓に並べる水戸光圀は傑作でした。水戸光圀は食通で、肉料理と中華料理が大好きでした。映画にはローストチキン・餃子・肉まん・ラーメン・ワインが登場します。これはきちんと史実に則っています。水戸光圀は生類憐れみの令が出ていたときにも、堂々とビーフステーキに舌鼓を打っていた筋金入りの食い道楽です。

ただ一つ時代考証から外れていたのはお公家がお歯黒をしていないところですが、これは気持ちが悪いので敢えて再現しなかったのだと思います。

史実は半分くらいでだいぶ創作が入っていると思いますが、あまり気にすることはないと思います。非常によい作品でした、お薦めです。「おおかみこどもの雨と雪」「あなたへ」「天地明察」今年の邦画は豊作です。

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コメント

映画はまだ見ていませんが、原作は読みました。
キャラ立てがアニメ的(特にヒロイン)だと感じてたら
作者はラノベも書かれるそうなので納得しました(悪口ではありません)。
時代小説をあまり読まれない、特に若い方への入口としてはとても良い本だと思います。
暦に対する朝廷と幕府の軋轢も面白い着眼点でしたね。

次作はその水戸光圀を書かれるそうなので期待しております。

暦という地味な題材を良くあれだけ面白い作品に仕立てたと思います。

史実の安井算哲もすごい人なんですよね。道策に先番ですし、山崎闇斎門下、保科正之や水戸光圀とも親交があり、この時代の知性の粋を体現したような人物です。

ガリレオやミケランジェロのようなタイプの人ですね。

しかも算哲は何度か失敗を経験していて、そこが彼を更に魅力的にしています。

水戸光圀は個人的にはあまり好きな人ではないですが、この作家さんが不良マンガみたいなノリで書けば魅力的な人物として蘇りそうですね。

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