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2012年9月 1日 (土)

詩経勝手読み(四一)・・・瓠葉・苕之華

 瓠葉と苕之華は一見しただけれでは深い意味がなさそうな詩に見えます。瓠葉は兎の丸焼きを肴にしてお酒を飲みましょうと言うだけの詩ですし、苕之華は貧乏を嘆く詩です。

 しかし間に挟まれている漸漸之石が晩秋の星空を詠んだ詩であるとすると、二つの詩の意味合いも変わってきます。

 苕之華の第三聯の句「三星在罶」は従来の解釈でも二十八宿の参宿(オリオン座の三つ星)を意味するとされてきました。罶は魚を捕らえるための袋状の籠ですが、オリオン座の別名でもあります。オリオン座は中心が締まった袋のような形状をしています。これが魚を捕らえる籠に似ているので、中国ではオリオン座を罶と呼びました。

 従って「三星在罶」はオリオン座に三つ星ありという意味になります。

 苕之華とはノウゼンカズラという蔓性の赤い花のことですが、おそらく、第一聯はオリオン座の赤星(ベテルギウス)を、第二聯はオリオン座の青星(リゲル)を表しているのでしょう。

 この詩は一等星と二等星が七つも並んでいるオリオン座を、ノウゼンカズラの蔓と花のようだ表現したのでしょう。

苕之華  ノウゼンカズラの花(オリオン座)
芸其黃矣 赤に黄色がにじんでいる(ベテルギウス)
心之憂矣 (オリオン座が空に上ると)秋が深まり心は憂い
維其傷矣 感傷的な気持ちになる

苕之華  ノウゼンカズラの花
其葉青青 青々とした葉(リゲル)
知我如此 みんなは私は活き活きしていると言うが
不如無生 本当は死んでしまいたい気持ちなのに

牂羊墳首 山羊の首(牡牛座)
三星在罶 オリオンに三つ星
人可以食 食べ物がないわけではないが
鮮可以飽 満足するほど食べられる人は少ない

 
 瓠葉はオリオン座と牡牛座を表現した詩です。先に見たように、オリオン座は中心が細くなった袋のような形状をしており、これはヒョウタンに似ています。

 牡牛座の顔の部分(ヒアデス星団)は古代中国では畢(雨降り星)と呼ばれていました。畢は兎を捕るための網です。

 三千年前は冬の星座は晩秋に天に上りました。地球の歳差運動によって、季節によって見える星空は少しずつ変わっているからです。歳差運動は二万六千年で一周します。そのため二千年で、星空は一ヶ月分ずれることになります。

 実はオリオン座の足下には「兎座」という星座があります。古代メソポタミアでは古くから知られている星座です。易経や詩経にはメソポタミアの天文知識の影響が見られるので、古代中国人は兎座のことを知っていたのかもしれません。

 瓠葉は晩秋の夜空を見上げながら酒と料理で体を温めましょう、という渋い詩です。農作業が一段落し、収穫物に囲まれてほっとするひとときを歌った詩でしょう。

幡幡瓠葉 ひらひらとしたヒョウタンの葉(オリオン座の下にある)
采之亨之 兎を捕まえて煮込もう
君子有酒 大人たちは酒を飲み
酌言嘗之 おしゃべりをし、舌鼓を打つ

有兔斯首 兎の首を
炮之燔之 丸焼きにしましょう
君子有酒 大人たちは酒を飲み
酌言獻之 お酌をし合って乾杯をする

有兔斯首 兎の首を
燔之炙之 焼いてあぶって
君子有酒 大人たちは酒を飲み
酌言酢之 杯を酌み交わす

有兔斯首 兎の首を
燔之炮之 焼いてあぶって
君子有酒 大人たちは酒を飲み
酌言醻之 互いの健康を祝す

 たわいのない詩のように見えて、星座と晩秋という背景を理解すれば、瓠葉は豊かな稔りを祝福する詩であり、苕之華は秋のセンチメンタルな気分を表す詩であることが分かります。

 古代人を甘く見てはいけません。彼等が残した言葉には全くの無駄もありません。全てに深い意味があります。

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