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2012年9月29日 (土)

旧暦2033年問題

旧暦の月が決められなくなる2033年問題というのがあります。

これは日本が民間で使用している天保暦が太陰太陽暦として精確すぎるゆえに生じる問題です。最近NHKが旧暦を流行らそうとしているのは、この問題に世間の注目を集めるための下準備ではないかと私は考えています。

2033年は次の式年遷宮の年なので、2014年までにこの問題に決着をつける必要があるからです。

旧暦は天動説で組み立てられているのですが地動説で説明すると、

二十四節気は地球の軌道を24等分なので、太陽を中心として15度間隔で配置されます。地球の公転速度は遠日点では遅く、近日点では早いので(ケプラーの法則)、遠日点付近では二十四節気の間隔は約16日になり、近日点付近では約14日になります。

陰暦の月は、どの節季が入っているかで決めます。

二十四節気の内、12個を中気、残りの12個をただの節季とします。中気には各月が配分されています。夏至は5月の中気ですから、夏至がある月は5月になります。中気がない月は閏月になります。

しかし、近日点付近では数十年に一度、一ヶ月の中に中気が2つある月が現れます。この月は何月にするべきか、明確な決めごとはありません。

ケプラーの法則を知らなかった昔の人がつくった陰暦では、地球はずっと同じ速度で動くことになっているので、この問題は発生しません。月決め問題は発生しない代わりに、太陽の観測から分かる本当の春分、夏至、秋分、冬至と暦上の秋分、夏至、秋分、冬至がずれます。

陰暦の二十四節季は概念上の日付で、実際の太陽観測から得られる日付とは別物です。ですから、観測を怠ると本当の節気と暦上の節季がずれます。

このように中国と日本の旧暦は、太陽観測と組み合わさっていますので、太陰太陽暦です。

安井算哲は、太陽観測によって正しい節季の日付を求めました。安井算哲の貞享暦の改良バージョンである天保暦は、ケプラーの法則を採用しましたので、太陰太陽暦としては人類史上最高の精度を誇りますが、数十年に一度月が決められなくなります。

2033年は次の伊勢神宮式年遷宮に当たります。次の式年遷宮の作業は2014年から始まります。今回の式年遷宮である2013年までに方針を決めないと、次の式年遷宮の日付が決まりません。だから国家規模で旧暦を盛り上げているのではないかと思います。

追記
このような問題が生じる天保暦を精確な暦と評価することへの反対意見があります。

貞享暦以降の日本の暦は、西洋の天体知識も取り入れて作られています。ケプラーの法則を採用していると言うことは、天保暦は地動説を前提に作られた、唯一の太陽太陰暦なんでしょう。

他の太陰太陽暦とは思想が異なるのだと思います。

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天文と歴史」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。thomasです。
一度易経関連のエントリーにコメントしたことがあります。
(そのときはtommyと名乗っていたかもしれません)
2033年問題については、おそらく書籍やネット上も含めて、
べっちゃん氏のこの記述が、最も優れた考察ではないかと思っています。
私のつたない言葉で言い換えれば、この問題は、要するに、
【定朔定気法】(朔望と太陽黄経の天文学的実測主義)と、
前漢太初暦以来の中華暦の伝統である、
随時置閏の方法論としての【歳中閏月法】の、
原理論(principle)レベルでの致命的矛盾が、ついに顕現化したものです。
歳中閏月の方法では、原理的に定朔定気を扱いきれない、
つまり、べっちゃん氏の議論でいえば「地動説を扱えない」

暦法に関しては、ご存じかもしれませんが、
素晴らしい総合サイトとしてsuchowan's homepageがあり、
彼の昨秋のブログエントリーに、この問題についての解説がありますが、
この解説、文化論としては珠玉ですが、結論だけは同意できません。

歳中閏月法を採る限り、2033年問題と同様の問題は原理的に生じ得るものであり、
ここに形而上学としての中華式太陽太陰暦は破綻したのだ、と私は理解しています。
さらに言えば、歳中閏月法の基本発想は、
中国哲学における時間概念の常識と密接に絡んでおり、
これが破たんしたということは、中華の形而上学体系自体が
近代天文学の前に破綻した、ということかもしれません。
旧暦に関心を持つ人は、中華文化にシンパシーを抱く人が多く、
場合によってはそれを職業にしている人(東洋占術家)もいるので、
こういう論説は嫌われるのですが。

投稿: thomas | 2012年10月 6日 (土) 00時29分

thomas様おはようございます。

お褒めいただきありがとうございます。

天保暦が地動説前提であることは、「天地明察」の内容を父に説明しているときに気がつきました。

父は理系の人間なのですが、旧暦の説明をしている私が天動説になっていることを指摘しました。

さらに会話が進んで、2033年問題を説明する際に、私はケプラーの法則を持ち出しました。私は一応地球物理出身なのでそこら辺は素養があります。

天動説なのにケプラーの法則が出てくる、そこで天保暦が地動説前提の暦であることに気がついたのです。

面白いことです。日本が開国の20年前に暦の上では中華の思想を捨てていたというのは。やはり暦は大事ですね。

これからはこういう事態が数十年に一度起きるようになると聞いています。現在の旧暦が確立した漢の時代には、地球と太陽と月の動きは天動説で説明しやすい位置関係にあったんでしょう。プトレマイオスが天動説で天体を説明しようとしたのもそのせいでしょう。

この三天体の関係は、地球の味噌すり運動の2万6千年を最大の周期として繰り返すので、2千年ごとに、天動説で充分に近似ができる時代と地動説でないと矛盾が出る時代がやってくるのでしょう。

三千年以上前のギリシャ、インドなどでは地動説が議論されていた形跡があります。三千年前は現在と同じで、太陽と月が定速度で円運動をするという仮説では、天体観測の事実を説明できない時代だったのでしょう。

ご存じの通り、私は易経と詩経を研究しているのですが、易経と詩経には天体を取り扱った文章は多数あり、西洋の天文学の影響も伺えます。メソポタミアから西周に西洋人が来ていたことも推測できます。

また、中華を確立した秦の始皇帝は胡人(ソグド人か?)でした。

中国哲学の基層の五経には西洋の記述と東夷の記述が多数含まれており、現在まで続く儒教や道教を中心とした中華哲学の要素はむしろ希薄です。

前漢は武帝の時代まで一種の鎖国状態でした。この間に、中国の文化がかなり変質したのではないかと思います。西洋と東夷の影響を排除したのでしょう。

匈奴に圧迫された自尊心を傷つけられたのもあるでしょう。非現実的な形而上理論を弄ぶ宋学が女真族に圧迫された時代に作られたのと似ています。

私の易経・詩経研究から再現される、西周と春秋戦国時代の中国は、様々な民族が自らの文化を守って自由に暮らし、女性も虐げられることのない、近代社会に近い世界です。

自らの文化の基層に、外の世界と等身大に付き合っていた時代の記憶があることを知れば、中国ももう少し落ち着くと思うのですが。あと日本人の西洋と中国へのアンビバレントの感情も解消するはずと思っています。お手本としていた中国文化の基層には、日本人そっくりの東夷の文化があるからです。

投稿: べっちゃん | 2012年10月 6日 (土) 09時37分

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2247
お上主導で祝日だらけ
効率の悪い日本の“休み方”
2012年10月09日(Tue)  磯山友幸 (経済ジャーナリスト)

べっちゃんさん、こんばんは。
こちらにするか、天知明察のほうがよいのか悩みました。

労働を前面に出し、宗教と社会の歴史を蔑ろにするのが疑問に感じました。

NHKスペシャルの今後の予定では中華は文明の断絶が無かったことになっていることに愕然としました。
何だかどんどん悪くなっているのは気のせいでしょうか。

投稿: 保守系左派 | 2012年10月11日 (木) 22時38分

保守系左派さんこんばんは

NHKはここ数年ほとんど見ていないのでよく分かりません。21世紀に入ってからNHKは劣化したと感じています。地球大紀行や映像の世紀なんかすごかったんですけれどね。

ごく基本的な疑問なんですが、最近の東洋史の研究者は自力で漢文を読めるのでしょうか?日本の研究者のみならず、中国も韓国も。

過去の研究者が作った現代語訳を使って、東洋史の研究をしているのではないでしょうか。

だとしたら、そのような物には意味がないですね。

詩経の国風と小雅の解読はほぼ終了しました。これから書物化します。これまでにない詩経の解説本になります。どうぞ楽しみにしてください。

投稿: べっちゃん | 2012年10月12日 (金) 01時20分

仕事の関係で海外へ行くことが多くなり、私の国富に対する見方が変わりつつあります。

国民の所得水準を上げたその結果として、国の経済が立ちゆかなくなることは今の通貨制度ではあり得ないと考えるようになりました。

国内の産業の配分は、勝手にフィックスされるでしょう。必要な物は貿易で輸入されます。今の通貨制度では、貿易赤字で国民が飢えることはあり得ません。

こういうことを言うとすぐにじゃあ自由貿易に賛成なのかという風に話を持っていこうとする人が多いですが、今の通貨制度では自由貿易は経済成長の原因ではないと思います。

自由貿易も規制緩和も科学技術も経済成長とは無関係です。趣味の問題です。

経済成長が国民に還元されるかどうかは、投資の元手が国内からか海外からかで決まります。貿易に頼る経済成長は国民への還元率が低く、国内の預金や国債が元手であれば還元率が高くなります。

こういうとデンパ経済学、ブーズー経済学といわれてしまいそうなのですが、目標の所得水準を目指して、国内の金融緩和や労働規制をし、公共事業や社会保障制度を整備していけば、その所得水準を達成できるのが今の経済です。

なせばなるの精神論のように見えるかもしれませんが。

その国が高い所得水準に達することができるかどうかは、国民がそれを望むかだけであり、ひとたび望めばそれは実現可能です。

投稿: べっちゃん | 2012年10月12日 (金) 08時25分

なかなか理解されにくいかもしれませんが、中国を周辺国にとって危険性の少ない国家にし、そして中国がばらまく自然破壊を低減し、中国の資源の無駄遣いをなくすためには、中国を更に豊かな国にするしか方法がありません。

豊かと言っても、無意味にGDPが上がるのではなく、国民全体が豊かになることですね。

中国は危険な国だから、成長を抑制させようという考えは、中国という問題を破滅的な方向へ導きます。

といっても、奇矯な中共の政治家どもをのさばらせて良いと言うことにはなりません。

中国を更に豊かにするためには、そろそろ中共には退場してもらう時期に来たと私は考えています。

変な歴史観については、あんまり興味がないです。自分の本をまとめる方で手一杯なので。勝手にやってくれって感じですね、政治的要請で生み出される論説など、どうせ十年後には消えるでしょう。

投稿: べっちゃん | 2012年10月13日 (土) 09時44分

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