サイの否定(3)・・・古
最後のだめ押しに、古の語源を解説します。
甲骨文字の古は盾の略形である申・十に口がプラスされた形をしています。白川静は、祭器に入れられた祝詞を守ることを表す象形文字と解釈しました。古代には古いものが大事にされたので、守るから古いが連想されたのだとしました。
漢語林は堅い兜の象形文字と解釈していますが、これは現在では間違いとされているようです。
漢字の語源を探るときには、その字形を部首として持つ文字の意味を全て解釈できなくてはいけません。古という字を盾で説明した気になっても、固・沽・蛄・胡などを盾で説明できなければ、語源として間違っています。
古をつくりとして持つ漢字は二十近くあります。その内、姑・枯・怙・詁の意味は、「ふるい」から派生しているので語源探査には使えません。
古を盾とする説で説明が付かない字は岵・蛄・胡・辜・沽・酤・苦などです。
岵は草木が茂った山、蛄は蝉の幼虫とオケラ、胡は西方の異民族と老人という二つの意味があり、辜は磔(はりつけ)、沽は売る酒を買うという意味、酤は一夜で作る即席の酒、苦は味覚のにがいが原意で、そこから苦しみという意味が派生しました。
従来の学説にとって非常に困るのが沽・酤で、一夜酒という意味であり、古いという意味に反するのです。したがって「ふるい」は古という字形が持つ意味の一部に過ぎず、「ふるい」を解明できただけでは古を解明したことにはなりません。
突破口となるのは戎(えびす)を意味する胡です。胡には西方の異民族という意味と老人という意味と、獣の顎の垂れ下がった肉という意味があります。
獣の顎の垂れ下がった肉という意味が重要です。西方の異民族の特徴は、髪を髷やみずらに結っていないことにあります。さんばら髪を垂らしているので、胡です。老人はヒゲを垂らしているのでやはり胡です。
古にはだらだらと垂れ下がるという意味があるらしいことが分かりました。これによって沽・酤も解明できます。一夜酒とは甘酒のことですが、甘酒は粘性が強くて、どろりと垂れます。だから古がつくりとして含まれます。
蛄も垂れ下がるという意味から説明できます。蝉の幼虫とオケラは、モグラのような垂れ下がったギザギザ形の前足が特徴です。
ここで、ギザギザという要素が出てきました。老人のヒゲや胡の髪もギザギザですので、古の元々の要素はギザギザと考えるべきです。
そうすると岵も解明できます。草木が茂った山は輪郭がギザギザしています。
苦はニガナという野草が元々の意味です。ニガナの花びらは先端がギザギザしています。画像検索でいくらでも出てきますので、確かめてみてください。
では最後に古の語源を解明しましょう。十は盾、則ち固い物を意味しています。口はご存じの通り石包丁(もう少し広く意味を取って石器としても良いでしょう)です。固い物を切ろうとすると石器は刃こぼれしてギザギザになるでしょう。
そして使い古した石器は刃こぼれしてギザギザしています。つまり、古とは古くて刃こぼれした石器が語源です。
刃こぼれした石器のような前足をしているのがオケラ。刃こぼれした石器のような花びらなのでニガナ、刃こぼれした石器のようにくたびれていてヒゲがギザギザなので胡です。
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