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2013年2月26日 (火)

サイの否定(2)・・・石・谷・言(音)・口

 口が祝詞を入れた器ではないことを、吉と右以外の事例でも証明してみましょう。

 まずは石。石包丁だから石、分かりやすいですね。

 

 これだけだとつまらないので、従来の学説の批判もしておきます。甲骨文字の石は石磬(せきけい)という三角形の石器の象形文字である厂(⊿)だけでした。

 

 白川静に批判的な甲骨文字小字典も石は白川説を採用しています。石磬は祭祀で使ったので、石磬とサイで石というわけですが、石という言葉には特に呪術的な意味がないのでこれはおかしいです。石を表したいのなら厂(⊿)だけでよいはずです。

 

 谷は甲骨文字では八を二つ重ねただけでした。これが谷の象形文字であることはすぐに分かります。谷と祝詞には関連がありませんので、白川静は谷の口は甲骨文字ではVであるので、谷はサイとは関連がないという牽強付会の説を述べていますが、白川静のこの説には根拠がありません。

 

 また、白川は谷の読みは容や裕と異なるのでやはりサイではないとしていますが、谷と音が近い古・告はサイで説明しており、彼の説には一貫性がありません。

 

 そもそもサイという概念自体が、漢字の音を無視してできあがった学説であるのに(白川は音が全然異なる文字でも、サイの概念に合致する字は全てサイで説明している)、谷を説明するときだけに音を持ち出すのはいただけません。

 

 自分の学説と現実の辻褄が合わなくなったときに、漢字の読みや形までねじ曲げてしまうのは、儒者や東洋史学者にありがちな悪い癖です。

 

 口が石包丁であるという説に立てば谷は簡単に説明ができます。石包丁はU字型をしており、谷の形に似ています。

 

 口=石包丁説に立てば、言(音)も説明できます。甲骨文字小字典によると、言と音は同じ文字でした。言・音は辛(ハリ)と口(石包丁)でできています。

 

 石包丁には必ずといってよいほど、二つの孔があけられており、そこに紐を通し、指に巻いて使います。石包丁をハリで掘削して孔を開けるときに音が出るので、音であり、言です。

 

 最後になぜ体の口が石包丁で表されているかですが、これは石包丁の形が人間が笑ったときの口の形と同じであるからでしょう。

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