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2013年3月 2日 (土)

辶の謎(1)・・・言葉と空間表現

 辶(しんにゅう・しんにょう)という部首には辺・道・辻・巡・近・返・逆・送・退・追・逃・迷・速・逐・通・遠などの字が含まれます。これらの字に共通するのは空間の表現です。

 辶は十字路を意味する「行」と足を意味する「止」が組み合わさってできた部首です。字に辶が付くと移動や空間の要素が加わります。

 

 石とか手とか象というように目に見え、触れることができる具体的な事物と異なり、空間というのは抽象的です。したがって空間を表現するには何か別の身近な事物を使用して喩える必要があるでしょう。

 

 すなわち空間をどう表現するかに、その言語を生み出した人達の思考の仕組みが表れます。例えば英語の本質はon,at,in,below,to,over,for,before,aboutなどの副詞と前置詞にあります。英語を使う人達が抽象的なことを表現する際には、必ずこれらの前置詞のどれかによって表現します。

 

 したがって、極論をすると、英語の動詞と名詞を聞き取ることができなくても、目の前に物があって、英語を話している人が今前置詞の中のどれを使っているかさえ分かれば、彼が何を言おうとしているかは推測が可能です。

 

 目の前に机があり、その上にリンゴがあって、彼がonを使っていれば、彼がリンゴのことを言っているのはわかります。そして更に彼がtoを使えば、そのリンゴをどこかに動かそうとしているのが分かります。Forを使えばそのリンゴには何か目的が付随していることが分かります。

 

 同じようにして、空間を意味する辶に含まれている文字を探れば、漢字を生み出した人達の頭の中を推測することが可能です。

 

 反例として白川説ばかり出して申し訳ないのですが、白川静は辶に含まれる文字の多くを、犠牲祭祀(いけにえ)で解説しました。それは白川が古代中国文明が犠牲祭祀を中心に回る世界であったと推測したからでした。この白川説の基礎になっているのが殷墟で発見された大量の人身御供の跡です。

 

 十年前くらいまでは、漢字を生み出したのは商と推測されていました。それは最古の漢字の記録である甲骨が商の遺物だからです。しかし最近の研究では、甲骨文字の用法には、本来の意味を知らずに仮借で事物を表している例が多々あり、甲骨を残した商の史官(占い師、記録官)は本来の意味を知らずに字を使っていた可能性が指摘されています。

 

 商は犠牲祭祀を中心に回っていた文明ですが、漢字を生み出したのは商ではない可能性があります。ですので、漢字を解明するに当たって、犠牲祭祀にとらわれるのは危険です。

 

 漢字の原義は現代人にとって理解が難しい残酷の祭祀を想定することなく理解可能ではないかと私は考えています。漢字を生み出した人達は、人間の体や、身の回りの動植物を上手に使用して、巧みに抽象的な概念を表現する字を編み出しています。

 

 辶の字を解明するによって漢字を生み出した人達の頭の中を覗いてみましょう。

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