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2013年4月13日 (土)

辶の謎(4)・・・近

 久し振りに辶の謎を更新。今回は二つの物の間の距離が短いことを意味する近です。

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 近は斤(斧)と辶の会意文字です。斤が斧(おの)を意味するのは、甲骨文字や金文の研究からも明らかです。甲骨文字では斤には石斧の刃先の形をした物と、カギ形の矢印(石斧全体の形を表していると考えられる)の2つがありますが、いずれも石斧を表していると考えて間違いないでしょう。

 

 斤をつくりに持つ漢字には切断するという意味と笑うという二つの意味があります。笑うの方は複雑なので、切断の方を先に見ましょう。

 

 切断の意味で斤が使われている字は、断・斬・新・折・析です。

 

 断の左側は糸が4つ並んだ字形で、縄を表します。縄を斧でぶった切るので断です。

 

 斬は刑罰で人体を切断する意味で使用されることが多く、両足を別々の馬車に結びつけて、馬車を逆方向に走らせて体を切り裂く車裂きの刑を表した漢字と言われています。

 

 あたらしいを意味する新は元々たきぎ(薪)を意味していて、字の左側は辛(ハリ)でした。辛と斤で何故薪になるかですが、辛とは細い木の枝を表しているのでしょう。薪というのは木材にならないような低くて枝が曲がりくねった灌木の枝を斧や鉈で切って使います。この作業が「芝刈り」です。木を根元から切ることはしません、根元から切ってしまえば一度に大量の薪ができるけれど、その後は薪を取ることができなくなります。毎年出てくる細い枝を薪として使うのです。

 

 折は木を根元から切った状態を表す字です。元々は手偏ではなく木が2つ並んだ字形でした。斧で木を切り倒すと折れます。だから折るです。

 

 木を鉈で切り刻むように物事を分解していくのが分析です。

 

 以上のように斤は斧で切断するという意味を持っています。

 

 では近の解明です。漢語林では近は物を切り刻んで短くするように距離を短くすることとしています。これで間違いないでしょう。ただ距離を短くすると言うのは、アインシュタインによって時空という概念が生まれた20世紀以降の考え方なので多少問題があります。道のりが短くなる場所まで移動するという表現の方が適切です。

 

 次に斤が持つ「笑う」という意味の解明です。斤をつくりとして持ち、笑うという要素を持つ字には欣・忻・听・口斤などがあります。

 

 漢語林では笑うと「ハッハッハ」というように、息が途切れ途切れになるからだと解釈していますが、これは苦しいのではないでしょうか。何故なら、これらの漢字は笑い声という意味よりは、口を大きく開けるという意味を持っているからです。

 

 ここで、私の口=石包丁説が役に立ちます。石包丁は握り拳サイズの小さな石器で、三日月形をしており、微笑んだときの口の形に似ていました。

 

 石斧の刃先は石包丁よりも大きく、大人の男が広げた手のひらくらいあります。また、甲骨文字の斤は半月形をしています。したがって、斤(斧)が笑うを意味するのは、大きく開けた口の形と斧の刃先が似ているからではないでしょうか。

 

 近は血縁者の意味でもよく使用される特徴があります。心理的な距離が短いからと言うのが従来の説明ですが、笑顔でつきあえる間柄という意味も付随しているのかもしれません。

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