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2014年9月 7日 (日)

ジャータカ

ジャータカ全集を読み始めました。ジャータカとは釈迦の前世物語集でお経の一種。古代インドの昔話です。世界中の神話や物語の枠組みが網羅されていると言われています。イソップ物語もジャータカの影響を受けたとされています。
 
全10巻のうち1巻までしか読んでいませんが、それだけでもわらしべ長者やネズミの婿取りの原型のような話を見つけることができました。戦後はそうでもなくなりましたけれども、昔はお坊さんというと面白い譬え話で、仏法をわかりやすく信徒に説く人というイメージがあったそうです。ジャータカはその譬え話の種本です。
 
ジャータカは紀元前のまだできたばかりの頃の仏教教団の姿を記録していると言われています。ジャータカの冒頭には釈迦の悟りを開くまでの伝記が挿入されています。この伝記は脚色が少なく、史料として正確なのではないかと言われています。中村元はジャータカの記述を元に釈迦の生涯を再現しようとしました。
 
このジャータカはどの宗派の経典かというと、面白いことに律宗です。律宗とは戒律の遵守を信奉する宗派です。ジャータカには釈迦が修行僧に戒律を守るように教え諭すパターンがあります。釈迦は「お前は前世でこの戒律を守らなかったから今苦しんでいるのだ」という具合に修行僧を教え諭しています。
 
ジャータカはだいたい4類型に分けられそうです。
1)釈迦の生涯とバラモン教に批判的な記述
2)修行僧に戒律の遵守を説いた記述
3)在家信者を教えに導く法話
4)完全なとんち話
 
ジャータカは現実に起きたトラブルや信者の疑問から始まって、そこに釈迦が登場して前世物語を説いて問題を解決するという構成になっています。この登場人物を上の類型に当てはめるとこうなります。
 
1)釈迦
2)釈迦+サーリプッタ+(アーナンダ)
3)釈迦+アーナンダ+在家信者
4)釈迦+その他の在家信者
 
サーリプッタは戒律の基礎や哲学的考察と結びついて登場します。サーリプッタはマガダ国首都のラージャガハで教団をまかされ、釈迦の思想を理論的にまとめたと言われています。2)はサーリプッタ本人、もしくは彼の弟子たちによって作られた説話でしょう。
 
アーナンダは釈迦の従兄弟で、晩年の釈迦を世話しました。彼は在家信者と交流が深く、あまりに彼らの世話を焼いたため、時に女性に追い回されたり、修行が遅れたりすることがあったと言います。
 
また、釈迦の継母マハーパジャーパティが出家しようとした際に釈迦は女性が教団に入ることを躊躇しましたが、アーナンダが釈迦に要請して釈迦は女性の出家を認めたと言われています。
 
アーナンダは仏教の在家への布教に大いに預かったと言われています。3)の譬え話を使って信者を教え諭すというのはアーナンダのアイデアだったのかもしれません。3)はアーナンダ本人や彼を慕う人によって作られたのでしょう。
 
2)と3)では比丘(出家者)たちが屋根のある家に住んでいたり、料理係が作る料理を食べていたりします。これは山野での修行と托鉢を修行の重要な実践と考えていた釈迦の教えにそぐいません。2)と3)は釈迦の死後に作られた話です。
 
4)はとんち話や商人の成功物語などで、後の方から経典に追加されたのでしょう。また4)では金・土地・美麗な衣服・御馳走を教団に寄付すればするほど功徳が積めると説いていて、そろそろ仏教教団も堕落が始まっていたことがわかります。
 
1)は収録数は少ないのですが重要です。初期の仏教はカースト制度を否定し、バラモン教の祭儀にも批判的でした。生前の釈迦は六師外道をやり込ませ、苦行を捨てました。あるいは行者のトリックを見破ることなどもあったと言います。
 
しかしやがて仏教はバラモン教と折り合いを付けるようになりました。後世の経典では釈迦の修行や布教をインドラや転輪王が助けたということになっています。ジャータカでも釈迦がバラモン教の神々として転生したりしています。
 
しかしジャータカに含まれる釈迦の伝記では、釈迦の成道を邪魔しようと悪魔が襲ってきたのに、バラモン教の神々は悪魔を恐れて退散してしまいます。その時に釈迦を守ったのはジャータカでは大地の神、木の神、蛇の神(川の神?)だったとされています。
 
またジャータカには羊や牛を犠牲として捧げるバラモン教の祭儀を非難する話があります。ほとんどのジャータカでは釈迦以外の登場人物がいて、この物語に出てくるAはアーナンダの前世であり、Bは私(釈迦)の前世である、という風な注釈がつくのですが、バラモン教を真っ向から非難する話だけは釈迦しか登場しません。そしてその中で釈迦は自分は木の神であったと言います。
 
私はこのバラモン教を非難する話だけは釈迦本人が説いた話が伝わったのではないかと思うのです。
 
そして、釈迦本人が説いたと思われる話から、シャカ族がバラモン教ではなく、大地や木や川の神(蛇)を崇拝する宗教を信じていたのではないかと考えられるのです。

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