易経勝手読み(八五)・・・水天需
私の易経の解説書「やさしい易」の追加注文がたまったので、第二版出版の準備を進めています。
64卦のうち、まだ初版本では分析が不十分な卦が数個あると感じており、その原稿の書き直しをしています。
易経には水天需という卦があり、雨乞いとか、何かを待つ卦とされています。需要というように、需には待ち焦がれるという意味があるからです。
しかし水天需の卦は需を「待つ」と解釈しても理解ができません。郊に需、沙に需、泥に需、血を需、酒食を需、意味が分かりません。
3年前に初版を出したときには、これはサービス業を表すのだとやや強引な解釈をしました。
しかし、需の甲骨文字を調べることにより、意味が分かりました。需の甲骨文字は大(人)の周りに水を表す点が数個ふってあります。この字は淘汰の「汰」と全く同じなのです。
汰は砂金取りのように、砂を洗って余分な物を洗い流す動作のことで、古い訓読みは「よなぎる」です。易経には甲骨文字までさかのぼることで解釈が可能になる卦がいくつかあります。前漢時代に確立した字形では理解ができないのです。これは易経の一部が非常に古い起源を持っている証拠です。
中国では汰という字はあまり使われなくなり、淘の字の方を使うようになりました。そして漢語林を調べていると淘鵝という単語を見つけました。これはペリカンのことです。
ハイイロペリカンはドナウ川流域から、インド、そして華南に生息しています。かつてはモンゴルや黄河流域にも生息していました。
ペリカンは、水ごと魚を飲み込み、くちばしの端から水だけを捨てて、魚をこしとって食べます。この動作がまさしく「よなぎる」であるため、淘鵝と呼ばれたのです。
砂、泥、酒食を「よなぎる」のはペリカンの特徴です。そして決定的なのは、ペリカンには「自らの血を子供に与える慈悲深い鳥」という伝説があることです。血に需です。
これは、ペリカンが子育てをするさいに、親鳥が小鳥にのど袋にためた魚を食べさせる様子が、子供にのどをつつかせて血を飲ませているように見えることからできた伝説です。
水天需はペリカンのことだったのです。
易経には他にコウノトリとタンチョウヅルを表す卦があり、湿地帯に住む鳥に非常に強い興味を持つ文化圏の資料が含まれていることが推測できます。
さて儒教ですが、孔子の思想を受け継いだ人達がなぜ儒と呼ばれたかのは不明です。雨乞いを需と呼んだからだといわれていますが、これは易経の水天需からの連想です。
水天需が雨乞いとされたのは、初爻の「郊に需」を周公旦が雨乞いのために、邑の外の祭儀場に薪を組んでその上に寝て、火をつけて自分を生贄にしようとした故事を当てはめて理解したからです。
しかし水天需の「郊に需」はペリカンが人を恐れずに邑の近くに住むことを表現したに過ぎないです。ペリカンは人懐っこく、飼い馴らせば鵜飼いのように魚を捕まえてくることすらあります。
孔子の弟子も雨乞いをしたかもしれませんが、雨乞いと儒は関係がありません。
ことは簡単です。儒者は葬儀屋なので白い服を着ていました。白は中国では葬儀屋のユニフォームです(ですから、昔は真っ白な装束で中国人と会うと、侮辱しているとされました、日本人とモンゴル人が白を尊ぶことを中国人は気味が悪いと思うそうです)。そして儒服はだぼだぼでゆったりとしています。
白くてだぼだぼの服を着て、よたよたと歩く様子はまさしくペリカンそっくりです。
儒というのは、儒者を揶揄する言葉なのです。
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