猿の生き胆
「ワニ前生物語」(3-208)
昔々ヒマラヤに象のように強くて美しい猿(お釈迦様の前生)がいました。そのころ、ガンジス川にワニ(デーヴァダッタの前生)の夫婦がいました。身ごもっていたワニの妻はつわりが起きて猿の心臓を食べたくて食べたくて仕方が無くなりました。そこでワニに言いました。
「ねえ、あなた。私はあの猿の王の心臓が食べたくなったわ」
「おまえ、わたしたちは水の中に住んでいるが、猿は陸に住んでいる。どうやって捕まえるんだい?」
「何とかしてください。もし手に入らなければ私は死んでしまいそうです。」
「じゃあなんとかしよう」こう言って、ワニは妻を安心させた。
猿の王が河で水を飲んでいたので、ワニは話しかけた。
「ねえお猿さん、ガンジス川の向こう岸にはマンゴーやらパンの木やらおいしい果物がたくさんありますよ。」
「ワニさん、ガンジス川は深くて広い。私には渡ることはできません。」
「もしあなたがいらっしゃるのでしたら、わたしが背中に乗せて連れて行ってあげましょう。」
猿はワニを信用して背中に乗りました。河の中頃まで行くと、ワニは猿を水中に沈めました。
「ワニさん、これは一体どういうことですか?」
「わたしは何も親切でおまえを連れて行くわけじゃない。身ごもった妻がおまえの心臓をほしがるので、食べさせてやるまでだ。」
賢い猿は言いました。「それは良いことをお聞きしました。私は今心臓をあそこのウドゥンバラの木の上に干しているのです。」
ワニは言いました「もし私におまえの心臓をくれるのならば、お前を殺さないよ。」
猿は言いました「では、あそこへ私を連れて行ってください。そうしたら、わたしは木にぶら下げている心臓をあげましょう。」
ワニは猿を連れてそこへ行きました。猿はワニの背から飛び上がって、ウドゥンバラの木の枝に腰かけて「バカなワニめ!生物の心臓が木の上にあるわけがないだろう。おまえの言う果物とやらはお前にあげるよ。まったく、お前の身体は大きいけれど、智慧がないんだね。」
川の向こうにあるという
マンゴーもジャンプもパンの実も
もうたくさんだ
わたしには、ウドゥンバラが一番良い
お前の身体は大きいね
けれども智慧はそれにそぐわない
ワニよ。おまえはわたしに騙された。
さあ、好きな所へ行くがよい
ワニは千金を失ったかのように悲しみ、がっかりとして家に帰って行きました。
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