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2017年6月 4日 (日)

天宇受売命とオリオン座

天の岩屋戸神話を3回に分けて解説します。これもまた、冬至の太陽の復活を表す神話です。

 

天の岩屋戸神話には、もちろん日蝕の神話としての意味もあるのですが、冬至の頃の明け方の東の空と西の空の星座の配置と動きは、天の岩屋戸神話と非常によく一致します。国生み神話は、世界の成り立ちを南北を軸に説明していました。天の岩屋戸神話は、世界の成り立ちを東西を軸に説明する神話です。

 

天の岩屋戸神話と言えば、天宇受売命(あめのうずめのみこと)です。踊って天照大御神を岩屋戸から引き出した神様です。

 

この神様は古事記では、天孫邇邇芸命が天から葦原の中つ国に下る際にも、先導の役を果たしています。邇邇芸命の神話と、天の岩屋戸神話も連携しています。邇邇芸命の天下りと神武東征神話は秋と冬の夜空の神話です。オリオン座を天宇受売命、牡牛座の頭を八咫鏡、昴(すばる)を八百万の神に当てると、天の岩屋戸神話と天孫降臨神話がきれいにつながるのです。

 

ではまず、天の岩屋戸神話を西空の側から見ていきましょう。

 

 

1) 天の岩屋戸神話

天の岩屋戸神話の概略は以下の通りです。

(1) 速須佐之男命が風雨を起こして天地を驚かせたので、天照大御神は謀反を疑った

(2) 速須佐之男命は、天の安河で誓約をして、逆心がないことを天照大御神に証明した

(3) 身の潔白が証明された速須佐之男命は、さらに暴虐のふるまいをした

(4) これに驚いた天の服織女(はとりめ)が絶命した

(5) 怖れた天照大御神は天の岩屋戸の中にこもってしまった

(6) 天照大御神を失った世界は暗闇に包まれた

(7) 八百万の神が天の安の河原に集まって対策会議を開いた

(8) 天宇受売命(あめのうずめのみこと)は、岩屋戸の前で胸と股を顕に大胆に踊り、それを見て八百万の神がどっと笑った

(9) 不思議に思った天照大御神が岩屋戸を少し開けた

(10) 天児屋命(あめのこやねのみこと)が、「あなたよりも立派な神様が現れたので喜んでいるのです」と八咫鏡を差し出した、天照大御神は鏡に映った自分の姿を見て、ますます不思議に思ってさらに岩屋戸を開けた

(11) そこを天手力男神が、力いっぱい天照大御神を引っ張り出した

(12) これにより、高天原と葦原の中つ国に光が戻った

(13) 八百万の神は、速須佐之男命を高天原から追放した

 

 

岩屋戸の場面は、2つのパーツに分けることができます。踊る天宇受売命と宴会を開く八百万の神(7810)と、天の岩屋戸に隠れた天照大御神とそれを引き出す天手力男神です(5911)。78,10が冬の明け方の西の空で、5911が冬の明け方の東の空に当たります。

 

2) 天宇受売命とオリオン座

 

オリオン座は2つの一等星と5つの2等星を含む、非常に明るく目立つ星座です。冬の夜空に天高く上ります。

 

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オリオン座(「星座早見検索小図鑑・下」林完次、講談社より)

オリオン座は日本でも注目されてきました。鼓(つつみ)に似ていることから鼓星と呼ばれたり、三連星が三丁星、三大師、算木星、竹の節と呼ばれたりしています。赤いベテルギウスを平家星、青白いリゲルを源氏星と呼ぶ地方もあります。(「宙の名前」林完次、光琳出版社)

三連星は天球の赤緯上にあって東西を指し示すので、航海の道しるべとして日本でも重視されてきました(勝俣隆)。

勝俣隆氏はオリオン座を天宇受売命に当てています。星図と天宇受売命の絵を重ねてみましょう。

 

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梶田半古の天宇受売命(「新潮古典文学アルバム1」新潮社より)と、オリオン座の星図(「星座早見検索小図鑑・下」林完次、講談社より)

古事記によると天宇受売命は「天の香山の小竹葉を手草に結いて」つまり笹の枝を持ち、「胸乳を掛き出で」即ち衣服の胸をはだけておっぱいを丸出しにして、「裳緒をほとに忍し垂れ」なんと股もさらけ出して女陰の前に帯を垂れて踊ったとあります。まるっきりストリップですね。このおおらかさが日本神話の良いところではないでしょうか。

 

オリオンはギリシャ神話に出てくる狩人です。オリオン座と天宇受売命の対応関係はこのようになるでしょう。

・右手にかざした棍棒=天宇受売命がさしかざした小竹葉

・肩のベテルギウスとγ星=天宇受売命の乳首

・腰のベルトの三連星=天宇受売命の帯

・トラペジウム(小三連星)とM42星雲=垂れた裳緒と女陰

・κ星とリゲル=裳(スカート)

 

 赤色巨星のベテルギウスが乳首になっていて、モヤモヤとしたM42星雲が女陰で、しかもトラペジウムで隠されているところがミソです。裳裾を表すリゲルは白色。すばらしい対応関係です。冬の夜空で大胆に舞う古代の美女の姿が目に浮かぶようです。ヒゲモジャの狩人よりも、断然こっちの方が芸術的です。

 

 

3) 八咫鏡とヒアデス(牡牛の頭)

天宇受売命の右斜め上には牡牛座があります。牡牛座の頭の部分にはオレンジ色の明るい星がV字型に並んでいて、これをヒアデス星団と呼びます。一番明るい星が一等星のアルデバランです。

 

 ヒアデスの三角形が八咫鏡に映った天照大御神です。オレンジ色の星が集まっているので、鏡に映った太陽としてピッタリでしょう。

 

Kojiki12

 牡牛座の肩にあるプレアデス星団、東洋での呼び名は昴です。すばるは集まるの古語だそうです。これは天宇受売命の踊りを眺める八百万の神です。古代人も寒くて長い冬の夜には、仲間の家に集まって、酒を飲んで歌ったり踊ったりして、温まったのではないでしょうか。

 

 冬至の頃オリオン座と牡牛座は天高く上ります。冬の夜空の特徴は、星が少ないことです。少ないですけれど、明るい星は多いです。明るい星がキラキラと散らばっているので、星座が見つけやすいのが冬の夜空の特徴です。

 

冬は厳しい季節ですが、夜空には明るい星が多く輝いています。冬の夜空を見て古代人は、神々が楽しんでいる姿を想像したのでしょう。なぜ冬なのに楽しそうなのか、それは豊穣の女神の復活を四宿しているからだと考えたのでしょう。白みかけた東の空に見えてくるのが、岩屋戸に隠れた天照大御神です。

 

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