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2017年6月 3日 (土)

伊耶那岐命と伊耶那美命

伊耶那岐命を琴座、伊耶那美命を蠍座に見立てると、国生み神話の流れが非常にすんなりと理解できます。
 
さらに、世界に分布するオルフェウス型神話が、北半球の中緯度地帯における琴座の動きをもとに生み出された、死を説明する寓話である可能性が見えてきます。

1)火之迦具土神とアンタレス

伊耶那美命が死ぬ原因となった火之迦具土神は、蠍座のα星アンタレスです。

 

アンタレスは赤色をした一等星で、北半球の夏の南天では一番明るい星です。赤色超巨星で、4.7年周期で0.9等から1.8等まで明るさ変える変光星です。

 

赤色が火や血を連想させることから、ラテン語ではコル・スコルピオ(蠍の心臓)と言い、中国では青竜の心臓として心宿と呼ばれています。日本語では赤星、酒酔い星、豊年星とも言います。

 

中国の古い呼び名は大火で、「書経」に「日永く、星は火、もって仲夏を正す」とあり、紀元前三千年ごろ、アンタレスの南中によって夏至を知ったと言われています(「宙の名前」林完次)。

 

このように、火に譬えられて、夏の盛りを知らせるアンタレスが、日本神話においても火の神を象徴する星であってもおかしくありません。

 

2)伊耶那美命と蠍座

 

Kojiki04_2

蠍座(「星座早見検索小図鑑・上」より)

四対目の肢の間にある赤い星がアンタレス

 

 

南洋の国生み神話では、神様が原初の海から国土を釣り上げます。蠍座は見事に釣り針型をしており、和名でも魚釣り星と呼ばれています。蠍のしっぽが銀河に投げ入れられた釣り糸に見えます。あるいは、夏の海辺で南天を見ると、蠍座は空から海に向かって投げ入れられた釣り糸のように見えます。

 

伊耶那美命が夏の南天を司る神であったとすると、古代人は蠍座を伊耶那美命が生んだ島々に見立てたのではないでしょうか。

 

3)伊耶那岐命と琴座

秋になると蠍座は西の空に沈んで見えなくなってしまいます。収穫の秋、そして冬がやってきます。

 

伊耶那岐命が黄泉の国を訪れる神話は、典型的なオルフェウス型神話です。オルフェウス神話とは、ギリシャ神話で、琴の名手オルフェウスは妻エウリュディケーを大変に愛していましたが、妻はあっけなく死んでしまいます。オルフェウスは妻を取り戻すために冥界を尋ねます。そして琴の音で冥王ハーデースを感動させ、エウリュディケーを連れて帰る許しを得ます。しかし、冥界を出るまで決して妻の姿を見てはいけないと言われます。しかし我慢できなくなったオルフェウスはあと一歩でこの世というところでエウリュディケーを振り返ってしまいます。エウリュディケーは見るも恐ろしい姿になっており、オルフェウスは妻を捨てて冥界から逃げるという話です。

 

オルフェウスの琴は言うまでもなく琴座です。琴座のベガは0等星でかなり明るい星です。伊耶那岐命が黄泉の国を訪れる神話がオルフェウス型神話であることから、私は伊耶那岐命は琴座のベガではないかと考えています。琴座はかなり北の方にあるため、春から秋にかけて一晩中見ることができます。冬でも夕方に西の空に沈んだと思ったら、明け方には東の空に再び上ってきます。ベガは死なない星なのです。

 

 

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琴座(右上の明るい星がベガ)

Kojiki20

冬の真夜中に地底に沈むベガを、西洋の人は地底の国に妻を探しに行ったオルフェウスに見立てているのでしょう。おそらく日本人は伊邪那美を探しに行った伊邪那岐に見立てたのでしょう。しかし、ベガは死の国の恐ろしさに懲りて、明け方には空に戻ってくるのです。非常によくできています。

 

では、命からがらベガが地底の国から戻ってくる冬の明け方、太陽はどのあたりから昇るのでしょうか?

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