機織りと恋
(3) 身の潔白が証明された速須佐之男命は、さらに暴虐のふるまいをした
(4) これに驚いた天の服織女(はとりめ)が絶命した
これには、機織りをする女が登場します。天の岩屋戸に入る前の天照大御神は速須佐之男命の前に無力です。これはおそらく、機織りの女神の神格が天照大御神に付与されたからと考えられます。天照大御神の神格に、なぜ機織りの神が混じっているのかは、非常に難しい問題なのですが、とりあえずこのシリーズでは機織りの祭である七夕が、なぜ夏の夜空と結びつけられたのかを解明してみましょう。
原始的な機織り(「モノづくりの考古学」より)
機織りは、2セットの経糸の間に、緯糸を通し、経糸の上下を入れ替えることで布が織られていきます。言葉で説明してもさっぱりでしょうから、「モノづくりの考古学」から機織りの仕組みの図を掲載します。
機織りの仕組みは次の4つに集約されます。
(1)二つに分かれた経糸が組み合わさって一つになる
(2)杼(ひ)に巻かれた緯糸が経糸の間を往復する
(3)杼打ち具で緯糸と経糸をしっかりと組み合わせる
(4)綜絖(そうこう)によって経糸の上下を入れ替える
2)機織りと恋
機織りはかつては女性の重要な仕事でした。すべての布は女性の手作業によって製造されていたのです。かつての世界中の農村では、農閑期や夜などに女性が上図のような器具を身に着けて、黙々と布を織っていました。女性の内職というと機織り・裁縫・洗濯が定番だったのです。いずれもかなり手間と時間がかかる仕事でした。
ですから、機織りと女性がセットになるのは当然です。では恋はどういった連想なのでしょうか。
七夕神話では、織姫が彦星の家に通い詰めになって、天帝の怒りをかいます。織姫は天帝の娘だったり、職工だったりするのですが、天帝が怒ったのは、織姫が彦星の家と自分の家を行ったり来たりして、布を織る仕事がおろそかになったからでした。
この行ったり来たりは、機織りの(2)緯糸を巻いた杼の動きからの連想です。頻繁に往復運動をする杼が、恋に夢中になって自宅と恋人の間を行ったり来たりする若い女性を連想させるのです。
機織りは単調ですが、リズミカルな作業なので、作業歌が歌いながら作業していたのでしょう。作業するのは女性なので、当然ながら恋の歌だったはずです。杼の往復運動を恋に夢中な若い女性に見立てるのは自然な連想に私には思えます。
では、なぜ機織りと夏の夜空が結びつくのか?それは緯糸を巻いた杼の形を見れば一目瞭然なのです。
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