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2017年8月 9日 (水)

海幸彦山幸彦とふたご座

星座で語る日本神話の続き。海幸彦山幸彦は、早春の星座の物語です。
 
〈海幸彦山幸彦の物語〉
海幸彦山幸彦、古事記の書き方だと海幸彦が海佐知毗古で神名が火照命(ほでりのみこと)、山幸彦が山佐知毗古で神名が火遠理命(ほをりのみこと)。天照大御神の命で葦原中国から天下りした天孫日子番能邇邇芸命(ひこほのににぎのみこと)と木花之佐久夜毗売(このはなのさくやひめ)の息子たちです。
 
海幸彦山幸彦の物語は、昔話として有名です。
 
  1. 海幸彦(兄)は大小さまざまな魚介類を取って、山幸彦(弟)は様々な獣を捕まえて暮らしていた。
  2. ある時山幸彦は「獲物を捕らえる道具を交換しよう」と海幸彦に持ち掛けた。
  3. 何度も断られたが、やっと海幸彦が合意してくれたので、山幸彦は海幸彦の釣り針をもって海へ漁に出かけた。
  4. しかし、全然魚は釣れなかったうえに、海幸彦の釣り針をなくしてしまった。
  5. 海幸彦は怒って、「同じものを返せ」と迫った。
  6. そこで、山幸彦は自分が持っていた十拳剣(とつかのつるぎ)を鋳つぶして五百もの釣り針を作って弁償しようとしたけれど「元の釣り針を返せ」許してくれなかった。
  7. 山幸彦が海辺で悲しんでいると、潮の神が現れて「どうしたのですか」と尋ねたので事情を話した。すると、小舟を作り「この船に乗れば海神の宮(わたつみのみや)にたどり着きます。門の横にある井戸の側の木に登れば、海神の娘が気がついて相談に乗ってくれるでしょう。と言った。
  8. 流れ流れて、山幸彦は海神の宮にたどり着いた。山幸彦が井戸の横の木に座っていると、海神の娘の豊玉毗売命(とよたまびめのみこと)の召使いが水を汲みに来た。召使いは井戸の水面が光ったので不思議に思って上を見ると、見知らぬ男がいたので水をあげようとした。すると山幸彦は玉のコップにネックレスの宝石をくっつけた。
  9. 召使いが豊玉毗売命に「門先にすごいイケメンがいてこの宝石をくださいました」と報告した。山幸彦と豊玉毗売命は一目で恋に落ちて。三年の間海神の宮で楽しく暮らした。
  10. 山幸彦は最初の事件を思い出して溜息をついた。心配した継父の海神が、大小の魚を呼び集めると、鯛が釣り針を飲み込んでお腹が痛くて困っていると名乗り出た。鯛の喉をまさぐると、海幸彦の釣り針が出てきた。
  11. 山幸彦を陸に帰す前に、豊玉毗売命は策を授けた。「私は水を操ることができます。お兄さんが下流に田を作るのならばあなたは上流に田を作りなさい。お兄さんが上流に作れば、あなたは下流に作りなさい。私があなたの田を豊作に、お兄さんの田を不作にしてあげましょう。お兄さんが逆上して攻めてきたら、塩盈珠(しほみつたま)で水責めにしなさい。お兄さんが助けを求めてきたら塩乾珠(しほふるたま)で助けてやりなさい。
  12. 山幸彦は帰ってから、豊玉毗売命の策で兄の海幸彦に勝利して、家来にした。海幸彦の子孫の隼人は、今に至るまでその溺れる時の踊りを演じて、朝廷に仕えるのである。
  13. 山幸彦のところに、妊娠した豊玉毗売命がやってきた。そして産屋を作って出産しようとした。
  14. 豊玉毗売命は「出産するときには、元の姿に戻ってしまいますので、決して産屋を覗かないでください」と言って、産屋に入った。
  15. 山幸彦は好奇心に勝てずに産屋を覗いたら、巨大な鮫がドッタンバッタン身をよじっているではないか。山幸彦は恐ろしくなって逃げてしまった。
  16. 豊玉毗売命は正体を知られたことを恥じて、子供を置いて海神の宮に帰ってしまった。
  17. 生まれた子供が天津日高日子波限建鵜葺草葺不合命(あまつひこひこなぎさうかやふきあへずのみこと)である。豊玉毗売命の妹の玉依姫(たまよりびめ)が、鵜葺草葺不合命を育てた。
長々と物語をたどったのは、従来あまり意味がないと言われていた「井戸」が、海幸彦山幸彦の星座を解明するキーになるからです。

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早春の星空と海幸彦山幸彦伝説

〈ふたご座〉
海幸彦と山幸彦の星座はふたご座です。ふたご座のα星カストル(2等星)とβ星ポルックス(1等星)は、日本でも昔から二つ星、兄弟星、蟹目、両目星などとセットで呼ばれていました。
 
ふたご座は中国の星座二十八宿では井星(ちちりぼし)と呼ばれています。ふたご座の形が漢字の「井」の字に似ているからです。
 
海幸彦山幸彦の物語では、山幸彦と豊玉毗売命の出会いのシーンで、井戸が重要な役割を果たします。しかし、なぜそれほどまでに井戸にこだわるのか不明でした。しかしこれは、海幸彦と山幸彦が井宿(ふたご座)を意味していることのヒントになっています。
 
おそらく白色のα星カストルが海幸彦で、橙色のβ星ポルックスが山幸彦です。日本語でもそれぞれ銀星、金星と呼ばれています。面白いことに、カルトスとポルックスはギリシャ神話でも兄弟喧嘩をして、最後は弟のポルックスが勝つことになっています。
 
ギリシャ神話のポルックスも鍛冶と関連があり、彼は鍛冶の神ヘファイストスから鉄の手を作ってもらって、ボクシングでは向かうところ敵なしでした。日本神話でも山幸彦が自分の剣を鋳つぶして釣り針を作っています。山幸彦は鍛冶の神でもあるのです。それは橙色が熱した鉄の色を連想させるからでしょう。
 
海神の神の娘である豊玉毗売命は、海から空の井戸を見上げて、イケメンの山幸彦に出会ったというわけです。
 
〈海幸彦の釣針〉
この物語で重要なアイテムになっている海幸彦の釣針もあります。それは、獅子座の上半身です。獅子座の上半身はクエスチョンマークを左右反対にしたような形をしています。西洋の草刈り鎌に似ているため、獅子の大鎌とも呼ばれています。釣針にも見えます。
 
おそらく、ふたご座の南にあるこいぬ座の二つの星が塩盈珠と塩乾珠でしょう。
 
海幸彦、釣針、塩盈珠塩乾珠に囲まれた中心にあるかに座が、物語のヒロイン豊玉毗目ではないかと思います。ただ確証がないです。かに座のプレセベ星団は、ギリシャ神話でも中国でも死者が集まる不吉な場所とされていました。豊玉毗売命は子供を産む際に、サメの姿になったために、恥じて山幸彦と別れてしまうのですが、これは昔の出産が危険で、母親が死ぬことも多かったことの寓話ではないかと考えられます。
 
〈異属婚神話〉
この神話の最後は異属婚神話になっています。人間と動物が結婚して子孫を残す神話です。世界中にあります。
 
異属婚神話には鉄則があります。この神話は鉄則に良く当てはまります。
 
  1. 男=人間、女=動物の場合…二人はすぐに一目ぼれして、子供もできるが、女の真の姿を知った男は恐ろしくなって逃げてしまう。女の父親や兄弟が、結婚の邪魔をすることが多い。
  2. 男=動物、女=人間の場合…男が結婚を申し込む。男はかっこよくて大金持ちなので、女の家の者は大喜びだが、女だけは拒否をする。しかし男の誠意にほだされて女は結婚をする。嫁入りした女は、やがて人間ではなくて男と同じ動物になってしまうが、幸せに暮らす。
海幸彦山幸彦の神話は、もともと人間の山幸彦が、鮫の姫に求婚する物語だったと考えられます。海幸彦は豊玉毗売命のお兄さんだったのでしょう。だから、山幸彦に意地悪をするのです。しかし、女の親族の妨害を排除した山幸彦は結婚しますが、やがて豊玉毗売命の正体を知って恐ろしくなって逃げてしまう。
 
鮫は胎生なので、出産をします。ホホジロザメやシロザメは1mもの巨大な子供を出産します。体をよじって出産しますので、古事記の出産の描写は鮫の生態に適合しています。昔の人は自然をよく観察していたのですね。
 
私は水族館が好きで、よく行くのですが、鮫は軟骨魚類なので体が膨らんでいて、滑らかなラインで、色白なので、なんとなくエロチックな感じがします。遠くから見る感じでは鱗がないので体は滑らかに見えます。だから、鮫のお姫様が美女というのは、個人的には納得がいく設定です(笑)
 
豊玉毗売命は神武天皇のおばあさんです。皇室の先祖に鮫がいると言っているわけで(隼人の寓意でしょうが)、日本の神話は実に面白いです。

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