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2017年11月 4日 (土)

惑星兄弟

神倭伊波礼毗古命の別名は若御毛沼命および豊御毛沼命でした。彼らは四人兄弟でした。ただし、私は若御毛沼命と豊御毛沼命を二人と数えて五人だと考えています。
 
神倭伊波礼毗古命は黄道上を旅します。黄道を旅する天体と言えば惑星です。そう、若御毛沼命たちは惑星の別名だったのです。
 
 
1)惑星の特徴
肉眼で見られる惑星は5つあります。太陽から近い順に水星・金星・火星・木星・土星です。地球よりも内側を公転する水星・金星を内惑星、外側を公転する火星・木星・土星を外惑星と呼びます。
 
内惑星は地球から見て常に太陽の近くにしか見えません。従って金星は、夕方日が沈んだすぐ後に西の空に見えて、1~2時間すると沈んでしまいます。あるいは明方太陽が昇る直前に見えます。
 
水星はさらに太陽の近くを廻っているため、太陽から最も離れた時期にしか見ることができません。年に数回しか見るチャンスのない天体です。しかも、1時間もしないうちに沈んでしまうか、太陽の明かりにかき消されてしまう儚い星です。
 
火星は地球の外側を廻っています。公転周期は約686日です。地球の公転周期が365にであるので、約2年かけて太陽の周りを公転していることになります。そのため大胆に単純化すると、火星は数か月夜空に見えたと思ったら、その後約1年弱地球の昼側にいて、前回見えたのとは反対側の季節の星空に現れるという特徴があります。神出鬼没なのです。
 
神出鬼没なうえに、燃えるような赤色をしていることから、西洋でも東洋でも火星は軍事を象徴する星とされてきました。
 
木星の公転周期は約12年、土星は29.5年です。したがって、木星と土星は星空をゆっくりと旅します。一年のうち半年くらい見ることができて、半年後にも大体同じ場所に見ることができます。
 
 

2)若御毛沼命兄弟

それでは、若御毛沼命兄弟の特徴をおさらいしてみましょう。

 

五瀬命

長男です。神倭伊波礼毗古命と一緒に、天下平定のために筑紫(九州)を出発して大和へ向かいます。しかし、浪速で邇芸速日命の義兄の登美能那賀須泥毗古(とみのながすねびこ)が放った矢に当たって深手を負い、紀ノ川の河口で死にました。

 

稲氷命

次男です。稲氷命は玉依毗売命のいる海の国に帰ってしまいます。

 

御毛沼命

三男です。浪の穂を踏んで、常世の国即ち死者の国へ旅立ちました。

 

若御毛沼命・豊御毛沼命

末っ子の四男です。五瀬命と一緒に、天下平定のために大和へ向かいます。浪速でいったん登美能那賀須泥毗古の軍勢に敗退し、紀伊半島を南下して、熊野から北上して大和盆地に攻め入ります。八咫烏の導きにより、怪物がうごめく熊野・吉野を抜けて大和盆地に入り、登美能那賀須泥毗古を討伐し、邇芸速日命を屈服させて初代天皇になりました。

 

 

天津神の神話は、海の民の神話です。ですから、彼らにとっての太陽が昇ったり沈んだりする場所というのは水平線ということになります。したがって、神武東征に参加せず、海の国から離れなかった稲氷命と御毛沼命は内惑星であると考えられます。

 

そして、神武東征に参加して黄道を旅した五瀬命・若御毛沼命・豊御毛沼命が外惑星でしょう。

 

 

3)惑星兄弟

御毛沼命=水星

常に波を踏むような場所にいる御毛沼命は、水平線スレスレにしか見ることができない水星です。滅多に表れないことを「常世の国」にいると表現しています。

 

稲氷命=金星

稲のような金色色で、現れたと思ったらすぐにお母さんの玉依毗売命がいる海の国に帰ってしまう甘えん坊の稲氷命が金星です。

 

五瀬命=火星

神武東征の前半で兄弟の先頭に立って戦い、血を流して死んで脱落してしまう五瀬命は火星でしょう。

 

若御毛沼命=木星、豊御毛沼命=土星

そして神武東征の主役である若御毛沼命と豊御毛沼命は、典型的な外惑星の動きをする木星と土星です。

 

 

4)逆行

惑星の特徴として逆行があります。惑星の順行と逆行

 

通常惑星は黄道上を西から東へと動いていきます。しかし、地球が外惑星を追い越す際に、見かけ上東から西へ動くように見えることがあります。これを逆行と呼びます。

 

邇芸速日命の軍勢にやられて、一行が方向転換する話は、外惑星の逆行を説明する説話と考えられるのです。

 

ただし神武東征神話では、神倭伊波礼毗古命はずっと逆行して進んでいます。くじら座→魚座→水瓶座→山羊座という動きは、東→西であり、惑星はそこまで大きく逆行はしません。そこは稗田阿礼が、皇室の始祖神話と惑星の神話をつなぎ合わせた際に、話を改編したのだろうと思います。

 

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