惑星兄弟
2)若御毛沼命兄弟
それでは、若御毛沼命兄弟の特徴をおさらいしてみましょう。
五瀬命
長男です。神倭伊波礼毗古命と一緒に、天下平定のために筑紫(九州)を出発して大和へ向かいます。しかし、浪速で邇芸速日命の義兄の登美能那賀須泥毗古(とみのながすねびこ)が放った矢に当たって深手を負い、紀ノ川の河口で死にました。
稲氷命
次男です。稲氷命は玉依毗売命のいる海の国に帰ってしまいます。
御毛沼命
三男です。浪の穂を踏んで、常世の国即ち死者の国へ旅立ちました。
若御毛沼命・豊御毛沼命
末っ子の四男です。五瀬命と一緒に、天下平定のために大和へ向かいます。浪速でいったん登美能那賀須泥毗古の軍勢に敗退し、紀伊半島を南下して、熊野から北上して大和盆地に攻め入ります。八咫烏の導きにより、怪物がうごめく熊野・吉野を抜けて大和盆地に入り、登美能那賀須泥毗古を討伐し、邇芸速日命を屈服させて初代天皇になりました。
天津神の神話は、海の民の神話です。ですから、彼らにとっての太陽が昇ったり沈んだりする場所というのは水平線ということになります。したがって、神武東征に参加せず、海の国から離れなかった稲氷命と御毛沼命は内惑星であると考えられます。
そして、神武東征に参加して黄道を旅した五瀬命・若御毛沼命・豊御毛沼命が外惑星でしょう。
3)惑星兄弟
御毛沼命=水星
常に波を踏むような場所にいる御毛沼命は、水平線スレスレにしか見ることができない水星です。滅多に表れないことを「常世の国」にいると表現しています。
稲氷命=金星
稲のような金色色で、現れたと思ったらすぐにお母さんの玉依毗売命がいる海の国に帰ってしまう甘えん坊の稲氷命が金星です。
五瀬命=火星
神武東征の前半で兄弟の先頭に立って戦い、血を流して死んで脱落してしまう五瀬命は火星でしょう。
若御毛沼命=木星、豊御毛沼命=土星
そして神武東征の主役である若御毛沼命と豊御毛沼命は、典型的な外惑星の動きをする木星と土星です。
4)逆行
惑星の特徴として逆行があります。惑星の順行と逆行。
通常惑星は黄道上を西から東へと動いていきます。しかし、地球が外惑星を追い越す際に、見かけ上東から西へ動くように見えることがあります。これを逆行と呼びます。
邇芸速日命の軍勢にやられて、一行が方向転換する話は、外惑星の逆行を説明する説話と考えられるのです。
ただし神武東征神話では、神倭伊波礼毗古命はずっと逆行して進んでいます。くじら座→魚座→水瓶座→山羊座という動きは、東→西であり、惑星はそこまで大きく逆行はしません。そこは稗田阿礼が、皇室の始祖神話と惑星の神話をつなぎ合わせた際に、話を改編したのだろうと思います。
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