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2018年2月14日 (水)

法華経(四)

9)ジャータカの罪
 
何故法華経が生まれたのでしょうか。それは、ジャータカを使った仏教の教えが行き詰まっていたからでした。
 
 
ジャータカでは、現生に発生する問題を全て前生の因縁で説明します。貧乏なのは前生で僧侶の食事を横取りしたからだとか、色ボケなのは前生で女に騙されたからだといった具合です。
 
それに対して、現生で僧侶となっている人は前生でも仏の教えを聴いていた、現生でお金持ちの人は前生に仏に供養したと説明されます。現生のエリートは前生でもエリートだったというわけです。
 
じゃあ努力をしても仕方がないね。と考える人が出てきても仕方がありません。身分が文化そのものであったインドではそれでもよかったのかもしれませんが、より自由であった西域の人たちは飽き足らないものを感じていたのでしょう。
 
 
10)前生の絶対的肯定
 
そこで、全ての人は前生に仏の教えを聴いていた、だから誰であれ必ず悟りが得られるという法華経を生み出したのでしょう。
 
本来仏教では苦しみの原因とされる前生の因縁を肯定的にとらえなおす。このコペルニクス的転回が法華経の肝です。
 
法華経には教えの内容は書かれていません。なぜなら、教えの形を決めた途端に、それが新たな縛りとなって、平等な教えではなくなってしまうからです。形が決まれば、得意不得意が生じます。しかし現生に表れている差別は、悟りの素質とは関係がないと法華経は説いています。
 
この平等が伝教大師が最も力説した部分です。南都仏教と袂を分かった原因でもあります。
 
 
11)人生=法華経
 
法華経の内容は、自分が生きていく過程で思い出すものであると釈迦如来は説いています。人生そのものが経典になるのだ。来生に如来となったあなたは、自分の人生を弟子たちの前で再生して、弟子たちを導くだろう、それが法華経であると言っています。
 
人間としての正しい生き方が、人間の心の中にあらかじめ備わっている、という法華経の思想は日本人に強い影響を与えています。法華経の教えは、記憶するのではなく、思い出すものなのです。
 
また、法華経の主人公は在家です。女人も変成男子の末に成仏できることになっています。普通の人の真摯な人生には経典と同等の価値がある。これも日本人に強い影響を与えています。
 
日本人の法華経理解が、浅薄なメシア思想でとどまらず、普通の人の人生に宗教的価値を与えるまでに昇華されているのは、伝教大師とその教えを受け継いだ比叡山の法華経研究が深かったのと、日蓮上人が日常生活を修行の実践の場ととらえる境地にたどり着いたからでしょう。
 
別に仏になるには来生まで待つ必要はないのかもしれません。各自の人生はどんな形であろうが、貴い。全ての人が、未来に如来になった時のために、法華経を書いている最中である。法華経は人生そのものに、仏の教えと同じ価値があると高らかに宣言したのでした。

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仏教」カテゴリの記事

コメント

数ある経典の中でも、法華経がこれほど人々に受け入れられた理由が分かったような気がします。

Baatarismさん、こんにちは

日本人は「死んだらあの世に行って仏さんの弟子になる。」とよく言いますが、これは法華経や浄土教の影響です。原始仏教は生まれ変わりは自明のものとしていますが、この世に生まれ変わるのであって、生まれる前や死んだ後に、どこか別の世界で仏の教えを聴くという発想はありません。

日本人特有の死生観を記紀神話だけで解明しようとするには無理があって、仏教、特に密教と法華経の影響は千年を超えていますので、無視できないでしょう。

「死んだら仏になる」なんて上座部仏教の国で言ったら「思い上がるな!」と怒られてしまうかもしれません(笑)日本人は普通のこととして、人は死んだら仏になると思っていますが、これこそ法華経の影響に他ならないのです。

死ぬ事を「成仏」と言う事が、法華経の影響を強く受けた日本仏教の特質を象徴しているのでしょうね。

日本はもともと、神様と人間の間の垣根が低いので、成仏が受け入れられやすい素地はあったのだと思います。

インドの在家信者向け説話集(要はインド版昔話、お伽噺)であるジャータカは似たような話が延々と続いてくじけそうになりますが、これを読んだおかげで大乗仏典が楽に理解できるようになりました。

難解な用語や込み入った組み立ては、小乗側からの批判をかわすための理論武装で、その理論武装をはいでいけば、ジャータカの文法でテーマを読み取ることができるのです。

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