華厳経(十) 開敷樹華夜天、願勇光明守護衆生夜天
開敷樹華夜天
これはパラソルが神格化された神様です。やはり世界樹でして、厳しい日差しや冷たい雨から人々を守ってくれる樹神のように優しい神様です。
さて奈良時代の光明皇后と称徳天皇の名前は、華厳経の開敷樹華夜天の説話からとっています。通説ではありませんが自明です。
遠い過去に人々が気候不順で飢えに苦しんだ時に、国庫を開いて人々を救った大王がいました。その名前が蓋妙音大王(パラソル大王)です。その時に村娘の寶光明童女が大王の徳を称えました。光明と称徳が出てきましたね。
蓋妙音大王=聖武天皇
寶光明童女=光明皇后
寶光明童女がした善行が称徳=称徳天皇
この見立ての重要なところは、寶光明童女が王族ではなくて村娘である点です。普通こういうところに出てくるのは転輪王の娘なんですが、寶光明童女だけは珍しく庶民です。だから非皇族で初めての皇后の名としてふさわしいわけです。
華厳経で国をまとめようとした聖武天皇の妻と娘にふさわしいお名前と言えます。
願勇光明守護衆生夜天
彼女も慈悲の神様です。善光寺の語源でもあります。
遠い過去の善光世界(宇宙)に善伏太子がいて、日宝光仏からの教えを受けていました。父の日勝光王に、罪人を釈放するように訴えました。王は太子の言葉を聴いて、罪人の罪を許したとのことです。
なんだか太陽がいっぱい出てくるお話ですね。
この女神さまもやはり世界樹と関連があります。大きな樹というのは公正な裁判や恩赦の象徴だからです。裁判官は膨大な法律と判例を知っていなければなりません。従って智慧の象徴である世界樹と縁があるのです。
古代シナの詩集である詩経には召公の詩があります。召公は伝説では周の王族だったとされていますが、実際は陝西に連れていかれた商の貴族の元締めでした。召公は大樹の下で公正な裁判をしたと称えられています。
さらに、召公の名前は奭でした。白川静によると奭という漢字は乳房に刺青をした女性を表すそうです。大樹と縁が深い召公が呪力を持つ女性という意味の名前を持っていました。またしても世界樹と乙女というモチーフに帰ってきました。召公が巫女であった可能性も考慮すべきと私は思います。
卑近な例だと、クリスマスの夜にはヤドリギの下に立った女性にキスをしてもおとがめなしという西洋の風習があります。これも世界樹の恩赦の一例です。
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